NEDO、ロシア極東における風力発電システムの本格導入に向けた取り組みを実現

■東方経済フォーラムでロシアと新たな意向表明書に署名

 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は9月8日、ロシアのカムチャツカ地方で風力発電システムの実証を実施し、普及に向けた取組を進めてきたが、「東方経済フォーラム」において、民間企業による同システムの導入に向けた基本協定書2件の締結を実現させたことで、ロシア極東における風力発電システムの本格導入への道筋をつけたと発表した。

 さらにNEDOは、ロシアのサハ共和国政府とルスギドロ社との間で、より寒冷な地域である同国ティクシ市において、風力発電システムのさらなる活用に向けたエネルギーマネジメントシステムの実証に関する意向表明書に署名。今後、日露企業間で具体的検討が進展し、同システムの本格導入が早期に実現することが期待できる。また、サハ共和国ティクシ市での実証では、意向表明書の下で実証前調査に取り組み、実証事業の早期実現を目指す。

 ロシア極東地域(※1)では、ディーゼル発電機に依存する独立電力系統(※2)が多数存在しているが、エネルギーコストの削減が大きな課題となっている。風力発電システムは、エネルギー供給源の多様化につながるだけでなく、エネルギーコストの引き下げにつながる有望技術であるものの、天候によって出力に変動が生じる。

 NEDOは、2014年11月18日に、ロシアのカムチャツカ地方政府および公開株式会社ルスギドロ(※3)(以下ルスギドロ社)傘下のAOエネルギーシステムヴォストーク社との間で基本協定書(MOU)を締結し、㈱駒井ハルテック、富士電機、三井物産を委託先として選定して、カムチャツカ地方ウスチ・カムチャツク市において、300kWの風力発電機3基と系統安定化システムから構成される風力発電システムの実証事業を行った。

 実証運転は2016年1月から10月まで行い、結果、ウスチ・カムチャツク市での風力発電システムによるディーゼル燃料の削減量は年間約400トンと試算(※4)された。その後、成果の共有を目的としたワークショップの開催や、風力発電システムのオペレータの育成のための技術講習を行うなど、普及に向けた取組を進めてきた。

 今回、NEDOは、ロシアのウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」において、NEDOがカムチャツカ地方で実施した風力発電システムの実証事業の成果を踏まえ、日本企業とロシア地方政府およびルスギドロ社との間で、風力発電システムの導入の具体化に合意した覚書2件の締結を実現させたことで、ロシア極東における風力発電システムの本格導入への道筋をつけた。

 さらにNEDOは、より寒冷な地域として、サハ共和国ティクシ市を対象に、風力発電システムのさらなる活用のために、エネルギーマネジメント技術の確立に向けて、サハ共和国およびルスギドロ社との間で、実証前調査の協力に関する意向表明書に署名した。今後、両国の関係企業・自治体との間で、同システムの導入に向けた具体的検討が進展することで、本格導入に弾みがつくとともに、サハ共和国ティクシ市との間では、意向表明書に基づいて実証事業の基本的なシステム構成やスケジュールを共有することで、実証事業の早期実現を目指す。

 これらの全てのプロジェクトが具体化すると、カムチャツカ地方で行った実証事業の成果も含め、ロシア極東において、3MW以上の風車が導入されることとなり、ディーゼル燃料の削減量は年間1,300トン以上となることが期待(※5)される。

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