NEDOと東北大と前川製作所、「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の実証運転を開始

■非常時でも継続運転が可能な浄水場の実現へ

 NEDO事業において、東北大学と(株)前川製作所は8月25日、水素貯蔵システムと電力貯蔵装置を組み合わせて、通常時の再生可能エネルギーの有効利用と非常用電源としての機能を併せ持つ「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を新たに考案・開発し、仙台市茂庭浄水場にて実証運転を開始したと発表した。

 再生可能エネルギーから得た電力を用いて水素を製造、利用するPower to Gasの一形態である本システムの実用化により、災害時に停電が発生しても安定して継続運転が可能な次世代の浄水場の実現を目指す。

 東日本大震災時は、非常用電源として、多くの自家用発電機が使用されたが、メンテナンス不足による動作不良や燃料不足など、さまざまなトラブルが発生した。仙台市でも、1978年の宮城県沖地震の経験から、主要な浄水場には24時間の停電に対応可能な非常用自家用発電装置を設置していたが、東日本大震災時は、停電時間が24時間をはるかに上回り、県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により燃料確保が困難を極め、浄水場の機能維持に大変苦慮する結果となった。

 また、福島第一原子力発電所の事故を受け、地球温暖化対策とエネルギー政策の両面から、再生可能エネルギーの利用拡大が進められているが、2012年にスタートしたFIT法により、再生可能エネルギーの導入量、特に太陽光発電については予想以上のペースで増加しており、系統への接続が保留されたり、新規接続契約が停止されるなどの課題が顕在化しつつある。

 このような背景の下、NEDOは、2014年度から「水素社会構築技術開発事業」の1テーマとして、仙台市水道局協力のもと同市茂庭浄水場をモデルに水素を利用して安定的なエネルギーを供給するための技術開発を実施している。同事業では、経済・技術成立性を見通す全体コンセプトを検討し、これに基づく技術の検証を行っている。

 国立大学法人東北大学と㈱前川製作所は、大容量化や小型化に優れた水電解装置・燃料電池・水素貯蔵システムと、耐久性、即応性、高効率性に優れた電気二重層キャパシタ(※1)等の電力貯蔵装置を組み合わせた新しいシステムを考案・開発した。新規開発した「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」は、平常時の太陽光発電の有効利用だけでなく、非常時のエネルギーの長時間安定供給も可能にするもの。そして、今般、仙台市茂庭浄水場の20kW太陽光パネルを用いた実証システムが完成し、実証運転を開始した。

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