住友商事、東芝、IHIの3社は8月23日、コンソーシアムを組成し、バングラデシュの石炭火力発電公社が推進する超々臨界圧石炭火力発電所の建設工事および港湾建設工事を受注したと発表した。事業資金は国際協力機構(JICA)による円借款によって賄われ、総事業費は円借款案件としては過去最大規模の約5,000億円。2017年8月の着工および2024年7月の完工を予定している。日本の技術・ノウハウを結集したもので、日本政府の推進する「質の高いインフラパートナーシップ」に資する案件。日本の資金および技術を活用してバングラデシュの逼迫する電力需要に応えるとともに、産業振興および経済発展に貢献する。
同事業は、石炭火力発電所建設と、日本の鹿島港をモデルとした深海港建設の複合プロジェクトで、バングラデシュ南東部マタバリ島に建設を予定している。輸入石炭を燃料とする高効率の超々臨界圧石炭火力発電を採用し、発電容量は1,200MW(600MW×2基)で、バングラデシュにおける総発電容量の約1割を担う見込み。 住友商事は発電所の土木工事と補機供給および海洋土木工事と港湾建設を担い、東芝プラントシステムと五洋建設を起用。東芝は蒸気タービン・発電機の供給と据付を、IHIはボイラの供給と据付を担当する。
受注した超々臨界圧発電設備は日本が誇る高効率石炭火力発電設備で、蒸気を超高温・超高圧化することで発電効率を高め、燃料の使用量とCO2排出量の抑制が可能となり、環境負荷の低減に貢献する。また、発電所の隣接地に建設されるバングラデシュ初の深海港は、マタバリ地区後背地の開発および発展につなげる計画。
バングラデシュは、経済成長に伴い電力不足が課題となっており、電力需要は2030年には現在の9,000MWから35,000MWにまで伸長するとも言われている。総発電容量の約65%は自国産の天然ガスによる火力発電が占めているが、政府は燃料の安定調達の観点からLNGや輸入炭を中心とした電源開発を推進している。
また、沿岸部が遠浅であり、大型船で運搬した貨物を小型船に移し替えて既存の港へ輸送している。深海港建設事業は、マタバリ周辺地区の産業発展の中核を担う事業として期待されている。
■各社の取り組み
住友商事は、「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」を中長期の戦略や個々の事業の根幹に据えている。同発電所はマテリアリティに掲げる、地域と産業の発展への貢献、快適で心躍る暮らしの基盤づくりに資する事業。電力インフラビジネスにおいて、引き続き、環境面に配慮した発電事業推進による「環境的価値」、電力インフラ整備がもたらす「社会的価値」、地域社会及び同社にとっての「経済的価値」という3つの価値(Triple Values)を追求していく。
東芝は、超々臨界圧石炭火力発電所向け蒸気タービン・発電機やコンバインドサイクル発電システムなどの高効率な発電設備を展開することで、グローバルでの低炭素社会の実現と安定的な電力供給の両立に貢献していく。また、2015年には東芝アジア・パシフィック社バングラデシュ事務所を設立しており、同国でのエネルギー・社会インフラを中心とした事業拡大に取り組んでいる。
IHIは,世界最高水準の蒸気条件による超々臨界圧ボイラをはじめ,エネルギー関連機器や環境設備の豊富な実績を国内外に有している。これからも,堅調な経済成長が見込まれるアジアをはじめとするグローバル市場において,高い発電効率と優れた環境性能を誇る発電機器・システムを提供することにより,環境負荷の低減と安定的かつ効率的な電力供給の実現に貢献していく。