三菱日立パワーシステムズ、ポーランドでガス火力発電設備を初受注し長期メンテナンス契約も締結

■出力49万kWのジェラン(Zeran)GTCCコージェネ施設プロジェクト向け

 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は6月30日、ポーランドの国有石油・ガス会社であるPGNiG(Polskie Gornictwo Naftowe i Gazownictwo)の子会社向けに、ポーランドの建設業者Polimex Mostostal S.A.(PxM)とのコンソーシアムで、出力49万kWの天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備をフルターンキー契約で受注し、併せて長期メンテナンス契約(LTSA)も締結したと発表した。首都ワルシャワ近郊のジェラン(Zeran)に建設されるコージェネレーション(熱電併給)施設の中核設備となるもので、運転開始は2020年の予定。ポーランドでMHPSがガス火力発電設備を受注するのは今回が初めて。

 今回のGTCCコージェネ施設は、PGNiG100%出資によるコージェネ事業会社のPGNiG Termika S.A.(Termika:テルミカ)が、ワルシャワの北方約10kmで運営するジェランCHP(Combined Heat and Power)プラントの敷地内に建設される。施設稼働後に、同敷地内の老朽化した石炭火力発電設備はその役目を終える。新施設では発電能力が80%向上するため、電力だけではなく、ワルシャワ市民に廉価な地域暖房用の熱も安定して供給できる。

 受注したGTCC発電設備は、M701 F形ガスタービン1基、蒸気タービン1基、排熱回収ボイラー、電気計装設備、その他の機器で構成される。MHPSはこのうちガスタービンを高砂工場で、発電機を日立工場で製作、併せて関連機器も供給する。MHPSの欧州拠点法人が蒸気タービン、排熱回収ボイラー、電気計装設備など付帯設備などを供給するとともに、プロジェクト全体の取りまとめを行う。その他プラント周辺機器の調達と土建・据付工事などを、PxMが手掛ける。

 また、MHPSの欧州拠点法人が、6年間のLTSA契約に基づき運転開始後、遠隔監視や技師の派遣を含めたGTCC発電設備の保守・管理を支援する。

 テルミカの社長であるウォルシェッチ・ドンブロフスキー(Wojciech Dabrowski(◇))は次のように語っている。「今回のGTCCコージェネ施設の建設はポーランド電力業界にとって重要な投資案件。首都ワルシャワのエネルギー安全保障を改善する上でも不可欠。高効率で最新鋭のガス焚き技術はIED(注1)やBAT(注2)等、欧州の厳しい環境保護基準を満たすことができるでしょう。これにより首都ワルシャワの大気をきれいにし、この地域の住環境を改善させるでしょう」

 MHPS欧州拠点法人の内田聡社長は「テクノロジーリーダーとして、MHPSは信頼できる高品質の製品開発を継続しており、将来の発電ニーズに対しても理想的に応えることができます。私どもの製品を通じて、お客様が化石燃料を効率よく利用し、同時に環境負荷を低減することに貢献します」と述べている。

 コンソーシアムパートナーであるPxM社長のアントニー・ヨズボーヴィッチ(Antoni Jozwowicz)は「コジェニッチェ火力発電所プロジェクトで培ったMHPSとの良好な協力関係を活かし、求められている性能の達成と納期遵守を成し遂げます」と述べている。

 ポーランドは世界有数の石炭資源国で、国を挙げて石炭埋蔵量の大部分を占める瀝青炭や褐炭を有効活用できる高効率石炭火力発電システムの導入や、環境負荷低減に役立つ総合排煙処理システム(AQCS:Air Quality Control System)の普及に力を注いでいる。一方で、同国南部に多い炭鉱の近くを中心に天然ガスも産出しており、国内ガス消費量の3割近くが自国由来。PGNiGでは、大気環境保護ならびにエネルギー利用効率向上などの観点から、天然ガス燃料を活用した高効率発電の普及にも注力している。

 GTCC発電は、ガスタービンでの発電に加え、その高温排ガスを利用して蒸気タービンでも発電ができ、化石燃料を使う発電の中で最もクリーンかつ高効率な方式。ポーランドにおける今回の天然ガス焚きGTCCコージェネ設備受注は、MHPSがGTCC発電設備を世界で多数納入し、技術・実績両面で市場の信頼を獲得していること、特にポーランド市場においてコジェニッチェ火力発電所やトゥルフ火力発電所など石炭火力設備および環境装置で大きな実績を持っていることが、高く評価されたことによるもの。

 MHPSは今後、5月に開設した新ポーランド事務所も活用し、石炭をガス化してコンバインドサイクル方式により発電する最先端の高効率発電技術であるIGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle:石炭ガス化複合発電)や天然ガス焚きGTCC、超々臨界石炭火力、先進的AQCSを提案・提供することにより、同国でのエネルギー資源の有効利用と環境負荷の低減に貢献していく。

 (注1)IED:Industrial Emission Directiveの略で、産業排出指令。
 (注2)BAT : Best Available Technologyの略で、利用可能な最善の手法を示している。