プライメタルズ テクノロジーズ(Primetals Technologies, Limited)は6月22日、宝山鋼鉄股●有限公司(Baoshan Iron & Steel Group Co. Ltd:Baosteel、宝鋼)から、熱間圧延機の板幅制御性能向上と、スクラップ材発生量削減を実現する新技術パッケージの動的板幅制御システム「Dynamic Width Control(ダイナミック・ウィデュス・コントロール)」を受注したと発表した。
このパッケージは、「インテリジェント工場」パイロットプロジェクトの一環として、中国・上海にある同社の熱間圧延機(HSM 1580)に導入されるが、システムの組込みに際しては生産ラインを停止する必要は無く、2017年末までに、通常生産を継続しながら試運転と調整が行われる。●印=にんべんに分。
熱間圧延の際には、板幅偏差を削減しつつ板幅不足を回避する必要があり、最終製品の板幅が確保できるよう熱間帯鋼の幅には若干の余裕部分(余幅)を持っているが、この部分はトリミングされて無駄なスクラップ材になるため、余幅を小さくしてスクラップ量を削減できれば、熱間圧延に大きな商業的メリットをもたらす。
熱間帯鋼の板幅は、一般的に粗圧延機の垂直スタンド(エッジャー)、および仕上圧延機における板張力と圧下量との関係によって決まる。この仕上圧延機に関しては、仕上圧延機用の新技術パッケージである動的板幅制御システムによって張力制御が行われ、板幅が調整される。
板幅偏差は仕上げ圧延機の入側と出側で測定され、入側板幅の偏差はフィードフォワード幅制御で、出側の板幅に残った偏差はフィードバック幅制御で、それぞれ偏差を縮小するよう補償制御される。さらに、モデルを使用するフィードフォワード幅制御では、ロールバイト内での幅広がりやスタンド間のクリープ変形の影響も考慮されている。
さらに、新方式の機械学習ベースの幅変化予測機能により、上流側となる粗圧延機の正確な目標圧延板幅が計算され、粗圧延機の圧延設定も改善される。
宝鋼は、新たに設立された宝鋼集団有限公司(China Baowu Steel Group Corp Ltd)の傘下にあり、約6,000万トンの年産量を持つ世界第 2 位の鉄鋼メーカー。同社の熱間圧延機(HSM 1580)は政府プログラム「China Manufacturing 2025(中国製造 2025)」において「インテリジェント工場」パイロットプロジェクトに選出されている。「Cyber-Physical System(サイバーフィジカルシステム :CPS)」の一つである同パッケージは、プライメタルズ テクノロジーズのインダストリー 4.0 関連製品群の一つ。