日本製紙、石巻で世界最大級のセルロースナノファイバー量産設備が稼働

■NEDOプロジェクト、年間生産能力500トン

日本製紙は4月25日、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトの成果をもとに、石巻工場(宮城県石巻市)にセルロースナノファイバー(CNF)を年間500トン生産可能な世界最大級の量産設備を完成させ、稼働を開始したと発表した。
この設備では、TEMPO触媒酸化法により化学処理した木材パルプから完全ナノ分散した、透明でさまざまな機能付与が可能なCNFを量産できる。今後、機能性シートや機能性添加剤、ナノ複合材など、幅広い工業用途での実用化が見込まれる。
1.概要
NEDOプロジェクト※1で日本製紙株式会社(社長:馬城文雄)は、CNFの酸化が最も効率的に進むTEMPO触媒酸化法※2の最適条件の検討や構造評価技術の開発を行い、木材パルプを原料にCNFを効率的に量産化する技術を確立した。
この基礎的な技術開発を基に、日本製紙は、2013年に岩国工場(山口県岩国市)に実証生産設備を設置し、技術開発を進め、このほど石巻工場に年間生産能力500トンの世界最大級のCNF量産設備を完成、稼働させた。

本量産設備は、TEMPO触媒酸化法により化学処理した木材パルプから繊維幅が3~4㎜と均一に完全ナノ分散したCNFを生産することができる設備で、得られるTEMPO酸化CNFは透明でさまざまな機能付与が可能であることが特徴。2015年に日本製紙は、世界で初めてTEMPO酸化CNFに抗菌・消臭機能を付与してシート化し、同社グループの日本製紙クレシアの大人用紙おむつ(製品名:「肌ケア アクティR」シリーズ)に実用化した。現在では、軽失禁用ケア商品(製品名:「ポイズR」シリーズ)にも抗菌・消臭機能を付与したCNFのシートが使用されている。TEMPO酸化CNFは、機能性シートだけでなく、機能性添加剤やナノ複合材など、幅広い工業用途での実用化が見込まれている。

2.今後の予定
NEDOは、今後、石油枯渇等の原料リスクを低減するため、非可食性バイオマスからのCNFの一貫製造プロセスの開発を引き続き推進し、持続可能な低炭素社会の実現を目指す。

【用語解説】
※1 NEDOプロジェクトプロジェクト名称:ナノテク・先端部材実用化研究開発/セルロースシングルナノファイバーを用いた環境対応型高機能包装部材の実用化技術開発

参画機関:日本製紙(株)、花王(株)、凸版印刷(株)
研究期間:2007年度~2012年度
研究開発責任者:河崎雅行(日本製紙)※2 TEMPO触媒酸化法東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝明教授らが開発した、TEMPO触媒によるセルロースの化学変性方法。これにより、パルプが解繊しやすく均一な幅のナノファイバーを得られる。

以上

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