富士フイルム、米・英のバイオ医薬品CDMO拠点に140億円投資

■バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大

富士フイルムは4月18日、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するために、米国・英国のバイオ医薬品の CDMO拠点に総額約140 億円の設備投資を行うと発表した。

ニュースリリース

米国では、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas, LLC(米国テキサス州、以下FDBT)が、生産能力増強のために、米国政府の助成を得て約100億円をかけて建設を進めてきた、cGMP対応の生産棟がこのほど完成。今後、約30億円を投じてバイオ医薬品の生産に必要な設備を導入し、2018 年初めに稼動させる予定。なお、FDBT は、2014 年に FUJIFILM Diosynth Biotechnologies U.S.A. Inc.(以下FDBU)を通じて買収した、バイオ医薬品の CDMO 。今年3月には FDBU が当初計画よりも前倒しして FDBT を完全子会社化し、現在、積極的な設備投資により事業拡大を進めている。

また英国では、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited (英国ビリンガム市、以下FDBK)に、約10億円をかけてバイオ医薬品の生産プロセスの開発拠点を増設する。同拠点の開設は2017 年夏を予定している。

今回、FDBTは、完成した新生産棟にシングルユース仕様の2,000リットル動物細胞培養タンクを3基導入する。これにより、生産能力の増強を図るとともに、バイオ医薬品や治験薬の多様化による多品種生産に対応する。さらに、新生産棟には動物細胞培養タンクを最大12基まで導入できる拡張スペースを有しているため、顧客からの増産要請や今後のさらなる需要拡大にも迅速に応えることができる。

また FDBK は、現拠点の近くに、バイオ医薬品の生産プロセスの開発拠点を増設する。新拠点には、医薬品の成分などを高速で自動分析できる最先端機器や培養・精製の小スケール実験が全自動で行える最新鋭設備などを導入し、独自の高生産性細胞作製技術「Apollo(TM)」と組み合せて、顧客ニーズに応じた高効率な生産プロセスをスピーディーに開発する。

富士フイルムは、2017 年3月に新設したバイオ CDMO 事業部の下、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下FDB)を中核に、開発・製造受託事業の拡大を進めている。現在、FDBは、生産プロセスの開発から、治験薬さらには医薬品の商業生産までの一連のワークフローを一体的・効率的に進めることができる、抗体医薬品向けの開発・生産プラットフォーム「SaturnmAb(サターンマブ)プラットフォーム(TM)」を活用した開発・製造受託サービスに注力している。今回の設備投資は、本プラットフォームによるサービスを提供する上で重要な役割を担うもの。

今後、富士フイルムは、バイオ医薬品のさらなる生産能力の増強を行うとともに、グループの技術を結集して高効率・高生産性の技術開発を進め、2023年度にはバイオCDMO事業で1,000億円の売上を目指す。

バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占めるバイオ医薬品の割合は高まっており、なかでも抗体医薬品の市場は大きく伸長している。バイオ医薬品の生産には、タンパク質などの培養・抽出・精製といった高度な生産技術と設備が必要であるため、優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増している。これに伴い、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%の成長が見込まれている。

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