国際協力機構(JICA)、インドネシア向け円借款貸付契約調印

■食料安全保障と観光産業促進を支援

  国際協力機構(JICA)は3月30日、インドネシアの首都ジャカルタで同国政府との間で、3事業、総額739億8,800万円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印したと発表した。

近年のインドネシア経済は、国内消費及び民間投資が牽引し、安定的な成長を維持してきた。2013年以降は、主要輸出品の天然資源価格の低下や国際経済環境の悪化等により実質GDP成長率は4~5%台とやや減速しているものの、中期的には、力強い成長が期待されている。

2014年10月に発足したジョコ・ウィドド政権は、「国家中期開発計画(RPJMN)2015-2019」で地域間格差の是正や安定した社会の構築も重視し、食料安全保障を国家開発の主要セクターのひとつに位置付け、コメ等の農業生産拡大を通じた、食料の安全保障及び自給率の向上を目標に掲げている。

また、世界最大の島嶼国であるインドネシアでは、各地で海岸侵食が顕在化しており、世界的に有名なバリ島でも、観光産業促進及び地域経済の成長に資する重要な観光地として、海岸保全が喫緊の課題となっている。

今回調印した円借款契約が対象とする事業は以下の3件。
(1)ルンタン灌漑近代化事業(借款金額:482億3,700万円)
(2)コメリン灌漑事業(フェーズ3)(借款金額:158億9,600万円)
(3)バリ海岸保全事業(フェーズ2)(借款金額:98億5,500万円)

詳細原文は以下の通り。

(1)ルンタン灌漑近代化事業
Rentang Irrigation Modernization Project
(a)事業の目的及び概要
本事業は、西ジャワ州チマヌック川流域ルンタン灌漑地区において、灌漑施設の改修及び維持管理体制の強化を行うことにより、コメ等の農業生産の増大を図り、もって農民の所得向上及び同国の食料安全保障に寄与するものです

(b)事業の背景と必要性
本事業の対象地となるルンタン灌漑地区は、ジャワ西部に位置し、国内第二位の灌漑面積(約8万ha、円借款事業ではチマヌック川の左岸側約3.7万haを対象)を有する重要なコメの生産地です。1916年にオランダが建設した灌漑施設があるものの、1981年以降は大規模な改修が行われておらず、その大部分が老朽化により破損し、乾期には灌漑面積の約7割に水が行き渡っていない状況であることから、灌漑施設の改修が急務となっています。
また、本事業は、インドネシアにおける「灌漑の近代化」モデルとして期待されていることから、水管理システムによる適切な水配分や住民参加型での維持管理等、効率的な水配分に係る支援も必要となっています。

(c)事業実施機関
公共事業・国民住宅省水資源総局(Directorate General of Water Resources, Ministry of Public Works and Housing)
住所:Jl. Pattimura 20th Kebayoran Baru, South Jakarta
TEL: +62-21-724-3663 FAX: +62-21-739-5626

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2023年4月(施設の供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付時期: 2017年4月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:土木工事(頭首工・一次水路)パッケージ(Rentang Headworks and Main Canal Upgrading Works)
予定時期:2017年2月(公示済)

(2)コメリン灌漑事業(フェーズ3)
Komering Irrigation Project (Phase 3)
(a)事業の目的及び概要
本事業は、南スマトラ州及びランプン州に跨るコメリン灌漑地区において、灌漑施設の拡張及び改修並びに維持管理体制の強化を行うことにより、コメの農業生産の増大を図り、もって農民の所得向上及び同国の食料安全保障に寄与するものです

(b)事業の背景と必要性
本事業の対象地となるコメリン灌漑地区は、スマトラ島南部のコメリン川上流域に位置し、国内第四位の灌漑面積を有する重要なコメの生産地です。我が国は、コメリン灌漑事業に対し、1979年のマスタープラン策定以降、同事業フェーズ2まで灌漑施設整備及び水利組合への支援等、維持管理体制の強化を継続的に支援してきました。
本事業では、最終段階としていまだ灌漑用水が供給されない農地への水供給及び維持管理能力の強化を図るとともに、水供給の拡大に伴う流水量の増加に対応する必要があることから、施設の改修を行うことにより、同灌漑地区全体として約7.3万haの農地への安定的な水供給を行います。

(c)事業実施機関
公共事業・国民住宅省水資源総局(Directorate General of Water Resources, Ministry of Public Works and Housing)
住所:Jl. Pattimura 20th Kebayoran Baru, South Jakarta
TEL: +62-21-724-3663 FAX: +62-21-739-5626

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2023年5月(施設の供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付時期:
2017年4月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:土木パッケージ(Construction Works)
予定時期:2018年3月

(3)バリ海岸保全事業(フェーズ2)
Bali Beach Conservation Project (Phase 2)
(a)事業の目的及び概要
本事業は、バリ島東部海岸及び南部海岸地域において、養浜や護岸等の建設・修復及び関係機関の海岸維持管理に係る支援を行うことにより、持続的な海岸管理の達成と海岸侵食被害の軽減による沿岸防災の実現を図り、もってバリ島の観光産業促進、地域経済の成長及び気候変動への適応に寄与するものです。

(b)事業の背景と必要性
世界最大の島嶼国であり、海岸線の総全長が約9.9万kmに及ぶインドネシアでは、各地で海岸侵食が顕在化しています。特に世界的に有名な観光地バリ島は、急速な開発に伴う海岸利用の拡大や無秩序な構造物建設や砂浜改修により、海岸侵食・砂浜の消失が深刻な問題となっています。気候変動に伴う海面上昇や高波の影響も懸念されており、海岸線の背後地の資産防護、居住地域の安全性確保という沿岸防災の観点からも海岸保全は喫緊の課題です。
JICAは「バリ海岸保全事業」で、日本の海岸保全の知見・経験を用い、インドネシアで初となる養浜と海岸構造物を組み合わせた海岸保全を実施、バリ島南部海岸の砂浜修復と著名な景勝地であるタナロット寺院の岸壁補強を行いました。本事業では、新たな観光名所として期待されるバリ島東部での海岸保全の他、海岸維持管理を担う組織の能力強化もあわせて実施し、持続的な海岸保全を実現します。

(c)事業実施機関
公共事業・国民住宅省水資源総局(Directorate General of Water Resources, Ministry of Public Works and Housing)
住所:Jl. Pattimura 20th Kebayoran Baru, South Jakarta
TEL/FAX: +62-21-726-2366

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
1.事業の完成予定時期:2022年12月(施設の供用開始時をもって事業完成)
2.コンサルティング・サービス(詳細設計等)にかかる招請状送付時期:2017年5月
3.本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:土木工事(チャンディダサ海岸復元)(Candidasa Beach Conservation Works))
予定時期:2019年6月

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