プライメタルズテクノロジーズは2月21日(ロンドン)、連続鋳造プラントの鋳型銅板に取付けられた温度計測用センサーである熱電対の検査ソリューションとして、熱電対の自動検査システム「Automatic Thermocouple Checker」を開発したと発表した。
これまで連鋳機の運用を行う上での問題として、銅製の鋳型に流し込んだ溶けた鋼鉄(溶鋼)が温度低下して鋳型に固着すると、最悪の場合は鋳型が破損して溶鋼が漏れ出す可能性があり、平均10 万ユーロ(約1,200万円)もの復旧費用がかかっていた。このような問題が生じる前に鋳型内の固着発生を迅速に検出するためには、鋳型の温度分布をできるだけ高い精度で計測することが重要。
鋳型の温度分布は、鋳型の銅板に外側から取り付けられた熱電対を介して計測される。これまで熱電対の検査は、ガストーチや熱風ヒーターで鋳型の銅板を作業員が熱して、その部分に押し付けるように取り付けられた熱電対の温度計測結果を確認するという人手に頼った方法が取られていた。ガストーチによる検査方法では銅板の損傷が発生することもあり、熱風ヒーターによる検査方法では銅板の加熱が遅く計測時間が長引くという欠点があった。また人手による検査方法では、検査用加熱の位置や距離が不均一で熱電対への加熱条件が同一に再現できないという欠点もあって、熱電対の温度較正が難しく、温度計測結果の違いが固着に起因するものか否かという判断も難しくなっていた。
これに対して、同社開発のAutomatic Thermocouple Checker は、熱電対への加熱を電気的に行い、鋳型に設置した熱電対はすべて同一の条件下でほぼ全自動で検査することが可能で、検査対象としても、鋳型の短片及び長片、製造現場での銅板単体、組み立てた鋳型など、いづれにも適用できる。
Automatic Thermocouple Checker の基本システムは、直線駆動ガイドに取り付けた加熱アームと計測・評価ユニットから構成される可搬式ユニットとして納入され、鋳型に取り付けられた熱電対コネクターに接続される。検査の際には、システムの計測アームが指定された熱電対コラムまで移動。次いで、熱電対が次々と自動的に加熱され、到達した計測温度を記録。銅板全体の検査完了後、ただちに正常な熱電対と不具合のある熱電対についてレポートが作成される。
このように熱電対を均一に加熱することで、熱電対の素線欠陥の検出だけでなく、汚れや押圧不足による熱電対の銅板への接触不良も検出できる。コンピューターを利用したこの検査プロセスにより、熱電対の取り付け設定についても点検ができることから、熱電対の不具合による鋳型交換は最小限に抑えられ、メンテナンスの頻度も低減。さらに、従来のガストーチの使用による検査方法とは異なり、鋳型銅板への損傷も回避される。収集された計測データは、品質管理を目的とした更なる評価のために保存することも可能。