東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、1月5日、製糖工場で発生する余剰バガス1)を原料として、各種バイオ化学品生産の共通原料となるセルロース糖2)を製造する技術実証を行うため、三井製糖株式会社(本社:東京都中央区、社長:雑賀大介、以下「三井製糖」)との合弁会社をタイに設立することを決定しました。
今回の技術実証は、東レが保有する水処理分離膜技術とバイオ技術を融合した「膜利用バイオプロセス」の研究・技術開発の一環です。膜利用バイオプロセスとは、糖化、精製のプロセスに水処理用分離膜を使用することにより、非可食バイオマスから高品質、かつ低コストな糖原料の製造と精製エネルギーの約50%を削減可能にする技術で、非可食バイオマスを原料とする素材や化学品の実現に貢献するものです。
また今回の取り組みは、NEDO国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業に係る「余剰バガス原料からの省エネ型セルロース糖製造システム実証事業」について、セルロース糖製造システム普及の事業化検討を目的としています。なお、タイ国は世界有数のサトウキビ生産国、かつアジア最大の糖輸出国であり、バイオマスを活用した事業や研究技術開発を推奨しており、実証事業推進に適しています。
本事業における実証プラントの設備能力は、バガス15t/日(乾燥重量)であり、粉砕・前処理、酵素糖化、膜分離工程を経て、約4.2t/日のセルロース糖を製造します。
本実証プラントでは、東レの水処理分離膜を活用した糖濃縮精製技術により、省エネルギーを実現しながら高品質なセルロース糖を製造することが可能になります。セルロース糖は、エタノール、乳酸、コハク酸などの各種バイオ化学品製造の共通原料として使用できるため、未利用バガスからバイオ化学品への新たなサプライチェーンを実現することができます。
また、当実証プラントでは、セルロース糖に加え、飼料等へ展開可能なポリフェノールやオリゴ糖を同一原料・同一プロセスにて併産することにより、バガス利用の経済性を高めることも可能であり、実証事業を通じて、事業化検討を進めます。
東レは「すべての事業戦略の軸足を地球環境に置き、持続可能な低炭素社会の実現に向けて貢献していく」という経営方針の下、日本の総合化学企業としていち早く、LCA思想に基づくLCM環境経営3)を推進しています。
当社はその一環として、今後、「膜利用バイオ変換技術」に関して、異業種間でのオープン・イノベーション(連携と融合)を積極的に推進し、サプライチェーンの構築とソリューションの提供を進めて参ります。
以 上
<新会社の概要>
1.会社名 Cellulosic Biomass Technology Co., Ltd. (略称:CBT)
2.所在地 本社:タイ王国バンコク市、 事業所:タイ王国ウドンタニ県
3.設立時期 2017年1月
4.資本金 680百万バーツ
5.出資額 東レグループ : 456百万バーツ【出資比率67%】 三井製糖 : 224百万バーツ【出資比率33%】
6.事業内容 膜利用糖化プロセスの技術実証
<用語説明>
1) 余剰バガス:サトウキビを搾汁した後に残る固形物。バガスは、製糖工場のボイラーで燃焼され電気としてエネルギー回収が行われているが、未利用として残った分を余剰バガスと定義した。
2) セルロース糖:非可食バイオマスに含まれるセルロースを加水分解することで得られるグルコースを主成分とする糖液。
3) LCA思想に基づくLCM環境経営:あらゆる産業活動、企業活動において、製品やサービスをライフサイクル全体で捉え(LCA:ライフサイクルアセスメント)、環境負荷を低減しながら、経済・社会的価値の向上を目指す持続的な取り組み(LCM:ライフサイクルマネジメント)。