・再審査請求を退け、2025年5月発動の関税措置を継続
再審査は、利害関係者がTRAの判断について再検討を求めることができる制度。今回の再審査は、両社からの申し立てを受けて実施された。
柳工は、バッテリー式電動建設機械(BEV)が対象製品の定義に含まれるべきではないと主張し、製品定義および関連関税からの除外を求めていた。一方、キャタピラーは、当初調査において協力したサンプル輸出業者として算定された個別の反ダンピング額について、算定方法に疑義があると指摘。被害マージン、ダンピングマージン、産業被害および因果関係の認定、さらには措置の内容について再計算を求めていた。
しかしTRAは、両社の主張を精査した結果、当初決定を修正すべき根拠は認められないと判断した。このため、中国製油圧ショベルに対する反ダンピング措置は、2025年5月14日に発効した官報通知の内容どおり継続される。
■当初調査の概要
今回の措置は、JCBからの申請を受けて実施された反ダンピング調査に基づくもの。TRAは、中国から輸入される油圧ショベルが、不当に低い価格で英国市場に販売されている(ダンピング)かどうかを検証した。
その結果、ビジネス・通商担当大臣(Secretary of State for Business and Trade)が最終勧告を承認し、サンプル対象輸出業者に対して18.81%、その他事業者に対して最大40.08%の関税を課す措置が導入された。
■背景
トレード・レメディーズ・オーソリティ(Trade Remedies Authority:TRA)は、不公正な輸入慣行や急激な輸入増加に対処するため、新たな貿易救済措置の必要性を調査する英国の専門機関。英国の貿易救済制度は、2018年の国境貿易課税法(Taxation (Cross-Border Trade) Act 2018)および2021年の通商法(Trade Act 2021)に基づき運用されており、世界貿易機関(World Trade Organisation:WTO)の協定に沿って整備されている。
再審査制度は、行政判断の透明性と公平性を確保するための仕組みで、申請者は再審査を求める理由や期待する結果、申請資格を明確に示す必要がある。
今回の判断により、中国製油圧ショベルを巡る英国市場での貿易規制は当面維持される見通しとなり、欧州建設機械市場における価格競争や電動化製品の扱いにも引き続き影響を及ぼす可能性がある。