・車載通信で収集業務を効率化、2030年までに5000台導入目指す
新明和工業とレシップ(岐阜県本巣市)は12月22日、塵芥車向け廃棄物収集業務効率化システム「G-SUPPORT(ジー・サポート)」を商品化し、同日から販売を開始したと発表した。両社は2030年までに累計5000台の導入を目標に掲げる。
開発の背景には、廃棄物収集業界における深刻な人手不足と高齢化がある。現場では「ベテランのノウハウ」「電話連絡」「紙ベースの地図」「手書きの日報」に依存する業務形態が多く、自治体や事業者からは経験年数に左右されない効率的な収集環境の整備が求められていた。両社は、塵芥車とバスが「決まった時間に一定のルートを走行する」という共通点に着目し、共同開発に着手した。
■主要機能は3分野で展開
G-SUPPORTは、レシップ製の車載通信機器「LIVU」を搭載し、クラウドサーバーと常時通信することで、ドライバー支援、管理者支援、DX・業務効率化の3分野で機能を提供する。
ドライバー支援では、収集地点を示す地図やルート、注意事項などを車載モニターに表示するナビゲーション機能を搭載。新規雇用者や応援ドライバーでも熟練者に匹敵する収集業務が可能になる。また、右左折のタイミングを音声案内するほか、スクールゾーンなどの規制表示や、塵芥車が走行可能な道路幅を考慮したルート案内で安全走行を支援する。
管理者支援機能では、全車両の現在位置や作業状況、積載状態をリアルタイムで把握可能。応援車両の選択や支援要請メッセージの送信、ルート変更指示などを画面上で操作でき、運転中のドライバーへの電話連絡を削減する。収集ポイントの一括登録や走行ルートの自動作成機能も備え、ベテランのノウハウを加味した手動編集にも対応する。
DX・業務効率化では、走行データや収集実績に基づく業務日報の自動生成機能を提供。乗務終了後の事務作業を削減し、残業時間の短縮に貢献する。収集履歴や作業実績はデジタルデータとして蓄積・出力でき、配車計画や車両メンテナンス計画の策定、安全教育への展開が可能だ。
■実証実験で効果を検証
発売に先立ち、廃棄物収集運搬事業者数社の協力のもと、実稼働中の塵芥車を用いた実証実験を実施。安全性を含むシステム検証を行うとともに、積載量や架装装置の稼働状況取得、データ管理機能の開発を進めた。協力企業からは「業務効率向上・負荷軽減に期待できる」との評価を得たという。
今後は、電子マニフェストシステムと自動連携できる日報作成機能の追加や、操作性の向上など、継続的な機能改善を行う方針。新明和工業の全国販売網を活用し、自治体および民間廃棄物収集事業者への普及を推進する。
新明和工業は特装車、パーキングシステム、流体、産機・環境システム、航空機の5事業を展開。特装車事業では塵芥車をはじめ200種類以上の「働く車」を手掛ける。レシップは輸送機器事業と産業機器事業を柱に、バス・鉄道用ワンマンシステム機器や車載用照明灯具などを製造している。