荏原製作所は12月16日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が設置する宇宙戦略基金の技術開発テーマ「将来輸送に向けた地上系基盤技術」のうち、打上げ高頻度化の実現を目指す分野に参画したと発表した。ロケット打上げの低コスト化・高頻度化に不可欠な地上設備の高度化を狙い、「極低温流体の高速充填技術」の開発に取り組む。
宇宙戦略基金は、世界的に拡大する宇宙利用を背景に、産学官の連携を促進する目的でJAXAに設置された。宇宙輸送、衛星利用、探査まで幅広い分野を対象に、先進的な技術開発を支援している。
荏原は「人と宇宙のつながりを当たり前に」をミッションに、2021年に宇宙事業チームを発足。これまでロケットエンジン向け電動ターボポンプや、宇宙機の排熱システム用ポンプの開発などに取り組んできた。今回の参画は、こうした機器開発に加え、打上げから次の打上げまでの準備時間(ターンアラウンドタイム)短縮を図る地上系技術の革新が不可欠と判断したことによる。
本テーマでは、SPACE COTANが代表機関として採択され、荏原は連携機関の一つである室蘭工業大学から一部開発業務の再々委託を受けて参画する。期間は2025年10月1日から2027年3月31日まで。荏原は、創業以来培ってきたポンプをはじめとする回転機械技術や流体制御技術を活用し、ロケット推進薬として用いられる極低温流体を安全かつ高速に充填する技術の確立を目指す。
今後は、水・空気・電子・エネルギー分野で培った「流れ」を創る技術を宇宙分野へ展開し、宇宙輸送の低コスト化と高頻度化に貢献していく考えだ。荏原グループとしても、ESGを重視した長期ビジョンと中期経営計画のもと、持続可能な社会の実現と企業価値向上を図るとしている。