・ファミリー企業が製品攻勢と戦略投資で将来への布石
クラース(CLAAS):2025年12月11日
■主要業績ハイライト
•売上高は49億ユーロ(約8,986億円、183円換算)の高水準を維持、純利益は2億3,000万ユーロを達成
•フォレージハーベスタ(JAGUAR)、トラクター(AXION)、ベーラー(CUBIX)などで世界初公開を含む大規模製品攻勢を展開
•アグリテクニカ展での金メダル獲得をはじめ、革新性が高く評価され多数受賞
•生産拠点と研究開発への戦略投資により将来競争力を確保
クラースのヤン=ヘンドリック・モール(Jan-Hendrik Mohr)最高経営責任者(CEO)は次のように述べた。「2025年は、当社の画期的な製品攻勢が大きな焦点となった年でした。強力なイノベーションにより製品ポートフォリオを戦略的に拡大し、顧客メリットと技術面の両方で新たな基準を打ち立てる数多くの新製品を発表しました。農業機械業界にとって困難な年でしたが、当社は良好な成績を収め、市場での地位をさらに強化しました。当社の戦略、イノベーション力、そして何よりも献身的なチームを信頼しています」
■安定した事業展開
地域別の売上推移は不均一だった。西欧での売上がわずかに減少した一方、中欧・中央アジア地域は7.9%の大幅な成長を記録した。南北アメリカでは、南米での大幅な売上増が北米での減少をほぼ相殺した。
■製品攻勢とイノベーション
本会計年度は前例のない製品攻勢が特徴で、ハノーバーで開催された世界最大の農業機械見本市アグリテクニカ(Agritechnica)でそのクライマックスを迎えた。クラースは技術的な新基準を打ち立てる数多くの新製品を発表した。
新型フォレージハーベスタシリーズのジャガー1000(JAGUAR 1000)は、市場最大の作物流量幅と最大1,110馬力のエンジン出力により、処理能力の限界を押し広げた。導入直後、「ファーム・マシーン・アワード」も受賞した新型ジャガー1200(JAGUAR 1200)は、12時間で4,096トンのサイレージを収穫し、新たな世界記録を樹立した。
新型大型トラクターシリーズのアクシオン9(AXION 9)は、完全新設計のキャビン、インテリジェントなドライブトレーンマネジメント、包括的なコネクティビティを備えて発表された。アクシオン9.450テラトラック(AXION 9.450 TERRA TRAC)は、「ハイパワー」カテゴリーで権威ある「トラクター・オブ・ザ・イヤー2026」の栄誉を獲得した。製品ポートフォリオには、最強の4気筒トラクターであるアリオン570 Cマティック(ARION 570 CMATIC)とコンパクトトラクターのアクソス3(AXOS 3)も追加された。
レクシオン8000(LEXION 8000)シリーズの最新世代と、中型コンバインのフラッグシップモデルとなる新型トリオン760(TRION 760)により、収穫技術分野でのクラースの市場リーダーシップが強固なものとなった。
代替駆動技術分野では、電動テレスコピックローダーのトリオン537e(TORION 537e)の発表により重要な一歩を踏み出した。ベーラーおよび飼料収穫技術では、アグリテクニカ・イノベーション・アワードの金賞を受賞した新型角型ベーラーのキュービクス(CUBIX)と、可変式ロールベーラーのセレックス700(CEREX 700)の導入がハイライトとなった。アグリテクニカではクラースは銀メダルも4つ獲得し、その中には無段変速トラクター用の予測型完全適応ドライブトレーンマネジメントシステムも含まれていた。
デジタル化分野では、クラース・コネクト(CLAAS connect)という新しいデジタルエコシステムが確立された。これは純粋な機械操作を超え、相互運用性と混合フリートに焦点を当てたものとなっている。
■将来への投資:拠点と研究開発
クラースは投資プログラムを着実に継続し、インフラの近代化と拡張に投資した。研究開発費は2025年も再び3億1,990万ユーロという非常に高い水準に達した。これによりクラースは、前年度同様、年間3億ユーロ以上を研究開発に投資し、イノベーション力の基盤を構築している。この継続的な高い取り組みは、研究開発が企業の持続的な成功と将来にとっていかに重要であるかを強調するものだ。
クラースの各拠点では重要な投資プロジェクトが実施された。ハルゼヴィンケル(Harsewinkel)の拠点では、新しい高度自動化された部品前加工センターが稼働を開始した。
飼料収穫技術の拠点であるバート・ザウルガウ(Bad Saulgau)では、全自動高層倉庫を備えた新しい工場構造が始動した。トラクター生産拡張のための多目的ホールが現在、フランスのル・マン(Le Mans)で建設中だ。クラースがコンバイン製造拠点を運営する米国オマハ(Omaha)では、成長市場である北米でのプレゼンス強化を目指し、新しい研究開発センターの礎石が据えられた。
もう一つの重点は、デジタルトランスフォーメーション、特にグループ全体でのERPシステムS/4HANAへの移行で、これは将来のイノベーションと効率向上の基盤となるものだ。
■2026年度の見通し:市場回復と売上増を予想
クラースは2026会計年度について、政治的不確実性の継続と依然として平均以下の生産者価格にもかかわらず、世界の農業機械市場が緩やかに回復すると予想している。ただし、この回復の規模と速度は地域によって異なるとしている。
流通チャネルにおける在庫削減と予想される緩やかな市場回復により、クラースグループは2026年に適度な売上増加を見込んでいる。しかし一方で、販売構造の拡大、研究開発費の増加、関税、デジタル化プロジェクトに伴う追加コストが発生する。このため、税引前利益は適度に減少すると予測されている。