ABB(Asea Brown Boveri):2025年11月11日
鉱山業は世界の温室効果ガス排出量の最大7%を占めているが、ABBが2024年10月に発表した「Mining’s Moment」レポートによれば、業界リーダーの30%が2030年の脱炭素目標の達成に遅れをとっている実態が明らかとなった。今回のホワイトペーパーでは、全電動鉱山の推進による課題と展望がまとめられており、ABBの提案には以下のポイントが含まれる。
• ホールトラックのトロリーアシストインフラなど、鉱山機械の電動化は最大90%のCO₂排出削減効果が見込まれる。このため、2024年10月時点で鉱山企業の42%が2026年までに運搬車両の脱炭素化を計画し、68%が2030年までにフリートの少なくとも25%を電動化する方針を示している。
• 68%の鉱山大手が、電動化をはじめとする新技術をZ世代人材の獲得や高齢化対策のドライバーとして位置付けている。
• 53%の企業が、2030年までに自社採鉱現場の抜本的な変革を予想している。
ABBは2021年以降、9カ国で26件のeMine™調査を実施し、電動フリート化の実践的ハードルと事業機会を明らかにしてきた。今回の第2版では、短期的な小規模プロジェクトを積み重ねる段階的アプローチによって、現場のKPIを支えつつゼロエミッション化への布石を築く方法論が示されている。既存技術の実用化状況についても言及され、現在市販されている電動積載系設備や運搬・搬送ソリューションは、すでに現場で実証されていると評価する。
また、ホワイトペーパーでは「変革の緊急性と実現可能性」を強調。新技術導入に前向きな現場が多い一方で、実績あるソリューションの選択を好む傾向も指摘された。このためABBは、先進技術の現場導入や業界内の協働を強く呼びかけている。注目事例として、ボリデン(Boliden 、スウェーデン)Aitik鉱山などで実証されたeMine™ Robot Automated Connection Device(ACD)を紹介。これは電動鉱山トラック用の高出力・全自動型充電ソリューションで、各種車両およびコネクタ規格へ柔軟に対応するもの。
ABBのプロセスインダストリー部門・鉱業マテリアル事業責任者ビョルン・ヨンソン(Björn Jonsson)氏は「完全な鉱山電動化は一朝一夕には実現しないが、eMine™発表から4年で確かな進展が見られる。今後はパイロットで蓄積した知見を大規模展開につなげていく」とコメント。段階的な導入や各現場のインフラ・事業計画に合わせたサポート体制で、顧客とともに移行プロセスを歩む方針を強調した。
さらに今回のホワイトペーパーは、変化に伴う混乱や初期投資、インフラ整備に対する懸念にも具体的に言及。自動化やデジタル統合によるパートナーシップを今後も推進し、「小さく始めて大きく変革する」ためのロードマップを顧客に提供するとしている。
ABBは、電動化とオートメーション分野で世界的リーダー企業。140年を超える歴史と約10万5,000人の従業員を擁し、スイス証券取引所(SIX:ABBN)とナスダックストックホルム(ABB)で上場している。
プロセスオートメーション部門(Process Automation)は、エネルギー・水・原材料供給から製造、物流に至るまで、多彩な産業オペレーションの自動化・電動化・デジタル化をグローバルに支援する。