・通期調整後EPSを上方修正、3億ドルの自社株買いも実施へ
AGCO :2025年10月31日
第3四半期の報告ベース1株当たり利益(EPS)は4.09ドル、調整後EPSは1.35ドルとなり、前年同期の報告ベース0.40ドル、調整後0.68ドルから大幅に改善した。為替の好影響3.7%を除くと、実質ベースの売上高は8.4%減少した。
エリック・ハンソティア(Eric Hansotia)会長兼社長兼CEOは「AGCOは、厳しい農業経済、高金利、慎重な設備投資という複雑なグローバル環境を巧みに乗り切り、今四半期も堅調な業績を達成した」と述べた。同氏は精密農業、自律走行ソリューション、持続可能技術への継続的な投資が同社のプレミアムブランドへの需要維持に貢献したと強調。同時に、規律ある生産削減、積極的なコスト管理、戦略的リストラの加速により対応してきたと説明した。
■地域別業績は明暗が分かれる
為替影響を除いた実質ベースでは、EMEが20.3%増、北米が32.1%減、南米が9.5%減、APAが5.2%減となった。
地域別営業利益率は、EMEが15.6%と高水準を維持したが、北米はマイナス10.5%と赤字だった。南米は5.7%、APAは4.9%となった。
北米では、市場低迷と需要を下回る生産調整により売上が大幅に減少。特に高馬力トラクター、スプレイヤー、コンバインの落ち込みが顕著だった。営業損益は前年同期比5,640万ドル悪化し、赤字が続いた。
南米では、市場需要の低迷により大半の製品カテゴリーで売上が減少。営業利益も前年同期比2,260万ドル減少した。生産水準の低下と若干のマイナス価格設定の影響が響いた。
欧州・中東は、昨年の長期工場停止からの回復により生産・売上が大幅に増加。高馬力および中型トラクターの伸びが大きかった。営業利益は前年同期比1億6,310万ドル増加し、大幅な増産効果が表れた。
アジア・太平洋・アフリカでは、需要低迷と生産減により売上が減少したものの、製造コスト削減により営業利益は前年同期比90万ドル増加した。
■2025年通期見通しを修正
AGCOは2025年通期の売上高を約98億ドルと予想。調整後営業利益率は約7.5%を見込む。減産の影響は、コスト管理と安定した技術開発費により一部相殺される見通しだ。
これらを踏まえ、通期調整後EPSの見通しを約5.00ドルに上方修正した。この予測には10月31日時点で発効している関税の影響とAGCOの緩和策が織り込まれている。
■戦略的な株主還元策
同社は第3四半期中にインド企業TAFEへの出資持分を2億6,000万ドル(税引後2億3,000万ドル)で売却完了した。この売却益を活用し、2025年第4四半期に3億ドルの自社株買いを開始する計画だ。これは先に発表した総額10億ドルの自社株買いプログラムの一環となる。
■市場環境は依然として厳しい
ハンソティアCEOは市場環境について、2025年の世界的な豊作により在庫が増加し、商品価格が圧迫されていると指摘。北米では政府補助金が農業所得を支えているものの、作物マージンは依然として制約されている。こうした経済的課題により北米と欧州での農業機械需要が低迷しているという。
2025年1月から9月の北米トラクター小売販売台数は前年同期比10%減、コンバインは29%減となった。ブラジルではトラクター販売が3%増加したが、大型機械の需要回復は鈍い。西欧のトラクター販売は8%減少した。
それでも同氏は「農家は生産性向上のため精密技術への投資を続けている。従来型機械の販売は圧力を受けているが、農家がマージンを守り変動性に対処するため、よりスマートで効率的なソリューションへの明確な移行が見られる」と前向きな見方を示した。
AGCOは1990年創業、米国ジョージア州ダルースに本社を置き、Fendt®、Massey Ferguson®、PTx、Valtra®などの主要ブランドを展開。2024年の売上高は約117億ドルだった。