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旭化成、川崎製造所に新工場建設、クリーン水素製造用アルカリ水電解システムの生産能力を拡大

旭化成(東京都千代田区)は10月23日、クリーン水素製造に用いるアルカリ水電解システムおよび塩素・苛性ソーダ製造に使用されるイオン交換膜法食塩電解プロセスの両事業に対応する新工場を川崎製造所(神奈川県川崎市)に建設する計画を正式決定したと発表した。新工場では、電解用枠と電解用膜を併産する体制を構築し、2028年度の稼働開始を予定している。

同計画は、経済産業省の「GX(グリーントランスフォーメーション)サプライチェーン構築支援事業」に採択されたもので、国内におけるクリーン水素製造装置のサプライチェーン整備を先行的に進める取り組みとして位置付けられている。新工場は、電解用枠および電解用膜でそれぞれ年間2GW超の生産能力を備え、既存の食塩電解プロセス向け設備と合わせて年間3GW超の体制を確立する。

■水素・食塩電解の両輪体制で事業強化

旭化成グループは『中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~』において、水電解・食塩電解事業を含む「エナジー&インフラ」事業を「戦略的育成」分野と位置づけており、今後の成長ドライバーとして重点的に投資を行う方針を示している。

同社は1975年からイオン交換膜法食塩電解事業を展開しており、膜、電解槽、電極、運転技術、モニタリングシステムなどを一体的に供給できるメーカーとして、50年にわたり国内外の産業基盤を支えてきた。近年は、こうした技術を基盤に、再生可能エネルギー由来のクリーン水素製造市場への参入を強化しており、2010年からアルカリ水電解システムの大型化・量産化技術の検証を続けてきた。2025年度からは事業化フェーズへ移行し、本格的な展開を開始する。

新工場の建設により、食塩電解の収益基盤を維持・拡大しつつ、水素関連分野への投資を加速する。同社は経済産業省との連携を通じてGX推進を図り、水電解分野におけるリーディングサプライヤーとして、国内外のクリーン水素供給体制と日本の水素産業競争力強化に貢献していく考えだ。

■川崎製造所の構造転換と将来構想

今回の新工場建設予定地である川崎製造所は、2025年5月にメタクリル酸メチル(MMA)モノマー事業の撤退を発表しており、経営資源の再配分を進めている。今後は、水電解・食塩電解事業を中核とする高付加価値型拠点へと転換を図る方針で、両事業を「二本柱」として柔軟かつ強靭な供給体制を構築する。

旭化成の竹田健二執行役員(交換膜・膜水処理事業、グリーンソリューションプロジェクト事業開発担当)は、「新工場は、食塩電解と水電解の技術を融合し、クリーン水素と基礎化学品の両市場に柔軟に対応できる体制を実現するもの。GXサプライチェーンの中核として、安定供給と技術革新の両立に取り組む」と述べている。

<新工場の概要>
所在地:旭化成株式会社 川崎製造所(神奈川県川崎市
生産品目:水電解・食塩電解用の電解用枠・電解用膜
生産能力:2GW超(既存設備と合わせて年間3GW超)
投資額:約310億円(うち最大1/3は「GXサプライチェーン構築支援事業」補助金)
スケジュール:2028年度竣工・生産開始予定

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