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ヒアブ(Hiab)、25年 7〜9月売上は11%減、米国市場の需要軟化で収益性が低下

ヒアブ(Hiab):2025年10月24日

ヘルシンキ、産業用荷役機器大手のヒアブ(Hiab)は10月24日、2025年第3四半期(7〜9月期)および9カ月累計の業績を発表した。貿易摩擦の高まりによる市場の不透明感が継続する中、特に米国市場での需要軟化が顕著となり、売上高の減少と収益性の低下を招いた。一方で、サービス事業は堅調に推移し、全体売上に占める比率が拡大した。

■第3四半期業績:米国市場の低迷が直撃

第3四半期の受注高は前年同期比3%減の3億5,100万ユーロ(前年同期3億6,100万ユーロ)となった。為替変動の影響を除いた実質ベースでは前年同期並みの水準を維持したものの、米国の顧客企業による意思決定の遅れが受注活動に影を落とした。

売上高は前年同期比11%減の3億4,600万ユーロ(同3億8,800万ユーロ)に落ち込んだ。実質ベースでは8%の減少となる。特に、上半期における米国設備機器事業の受注減少が第3四半期の売上高に直接的な影響を及ぼし、営業利益ベースで約2,000万ユーロの減益要因となった。

■キャッシュフロー創出力は維持、受注残高は減少

営業キャッシュフロー(金融費用・税引前)は6,900万ユーロ(前年同期1億4,800万ユーロ)と前年を下回ったものの、依然として堅調な水準を維持した。

スコット・フィリップス (Scott Phillips)社長兼CEOは「運転資本の効率的な管理により、投下資本営業利益率(ROCE)を29.8%に改善できた」と評価した。前年同期は27.1%だった。

一方、受注残高は期末時点で5億5,700万ユーロとなり、2024年末の6億4,800万ユーロから約14%減少した。受注の鈍化が続いていることを反映している。
サービス事業が成長を牽引、構成比34%に上昇

事業別では、設備機器(Equipment)売上が全体の66%(前年同期71%)を占め、サービス(Services)売上が34%(同29%)を占めた。サービス事業の売上高は前年同期比4%増の1億1,600万ユーロ(同1億1,200万ユーロ)と堅調に推移し、設備機器事業の落ち込みを部分的に補った。

サービス事業にはスペアパーツ、メンテナンス、アクセサリー、据付、デジタルサービス、再生機器などが含まれる。同社は中期的にサービス事業の拡大を戦略の柱に据えており、今回の結果はその方向性が着実に進展していることを示している。

■環境配慮型製品が急成長、売上構成比40%に

環境配慮型製品で構成される「エコ・ポートフォリオ」の売上高は前年同期比23%増の1億4,000万ユーロ(同1億1,400万ユーロ)に達し、全体売上の40%(前年同期29%)を占めるまでに成長した。持続可能性への関心の高まりを背景に、同社の環境対応製品群が市場で評価されていることを示している。

■9カ月累計業績:受注微増も売上は減少

1〜9月期累計の受注高は前年同期比1%増の11億600万ユーロ(前年同期10億9,500万ユーロ)とわずかに増加した。実質ベースでは2%の増加となる。一方、売上高は同6%減の11億6,000万ユーロ(同12億3,500万ユーロ)となり、実質ベースでは5%の減少だった。

事業別では、設備機器売上が全体の70%(前年同期72%)、サービス売上が30%(同28%)を占めた。9カ月累計でもサービス事業の構成比が上昇傾向にある。

営業利益は前年同期比6%減の1億6,600万ユーロ(同1億7,600万ユーロ)となったが、営業利益率は14.3%(前年同期14.3%)で横ばいを維持した。EBITAは1億6,800万ユーロ(同1億7,800万ユーロ)で、売上高EBITAマージンは14.5%(同14.4%)だった。

9カ月累計の純利益は1億1,900万ユーロ(前年同期1億2,800万ユーロ)、基本的1株当たり利益は1.84ユーロ(同1.98ユーロ)となった。営業キャッシュフロー(金融費用・税引前)は2億5,200万ユーロ(同4億1,100万ユーロ)だった。

エコ・ポートフォリオの9カ月累計売上高は前年同期比23%増の4億3,700万ユーロ(同3億5,400万ユーロ)となり、全体売上の38%(前年同期29%)を占めた。

■地域別動向:EMEAとAPACは増加、米国が減少

フィリップス社長兼CEOによれば、第3四半期の地域別動向は明暗が分かれた。欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域では受注が増加し、防衛ロジスティクス事業の成長と風力エネルギー部門からの大型受注が寄与した。アジア太平洋(APAC)地域でも受注が増加した。

一方、米国市場では関税関連の需要軟化が顕著となり、受注・売上ともに大幅に減少した。フィリップス氏は「貿易摩擦の高まりによる市場の不透明感が事業に悪影響を及ぼした。その影響は特に米国市場で顕著だった」と説明した。

■コスト削減プログラムを計画、2026年に2,000万ユーロ削減目指す

市場環境の悪化に対応するため、同社は2026年に2025年比で約2,000万ユーロのコスト削減を目指すプログラムの立案に着手したことを明らかにした。フィリップス氏は「販売管理費(SG&A)の削減により負の影響を一部相殺できた」としながらも、さらなる効率化が必要との認識を示した。
ただし、コスト削減と並行して成長投資も継続する方針だ。

フィリップス氏は「同時に成長への投資も継続し、主要セグメント、北米市場、サービス事業、事業の卓越性(ビジネス・エクセレンス)、M&A(企業買収)という戦略的重点分野を優先する」と強調した。

同社は「魅力的な市場で事業を展開しており、長期的な成長見通しは明るい」との見方を維持。景気サイクル全体を通じて年率7%超の成長を目指すとしている。

■MacGregor事業売却を完了、財務基盤が大幅に強化

同社は7月31日、旧Cargotecグループ傘下だったMacGregor事業の売却を完了した。

MacGregor事業は海洋貨物・荷役システムを手がけており、2024年11月の売却契約締結以降、2024年第4四半期から非継続事業として報告されていた。
売却完了により、第3四半期末時点のネット・キャッシュ・ポジション(実質無借金)は3億800万ユーロに達した。フィリップス氏は「有機的・非有機的成長投資の強固な基盤を得た」と評価している。

また、9月29日には取締役会が1億100万ユーロの追加配当を決定した。これは3月26日の年次株主総会(AGM)でMacGregor売却完了を条件に承認されていたもので、株主還元を強化する。

■報告体制を刷新、2セグメント制に移行

MacGregor事業の売却に伴い、同社は2025年1月1日付で報告体制を刷新した。新たに「設備機器(Equipment)」と「サービス(Services)」の2報告セグメント制に移行し、2025年1-3月期の四半期報告から新セグメントでの開示を開始した。

設備機器セグメントには、ローダークレーン、林業・リサイクル用クレーン、トラック搭載フォークリフト、着脱装置(デマウンタブル)、テールゲートリフターなどの新品機器が含まれる。

サービスセグメントには、スペアパーツ、メンテナンス、アクセサリー、据付工事、デジタルサービス、再生機器が含まれる。

これらに加え、グループ管理部門(Group administration)の営業利益情報も開示される。これは旧Cargotecの継続事業管理・支援機能のコストと、従来Hiab事業エリアに計上されていた一部管理・支援機能のコストを反映している。

■2025年通期見通しは据え置き、営業利益率13.5%超を維持

同社は2025年通期の業績見通しについて、継続事業の営業利益率が13.5%を上回るとする従来予想を据え置いた。フィリップス氏は「2025年の収益性の下限水準を設定している」と説明した。2024年実績は13.2%だった。

■2028年中期目標達成に自信、直近12カ月で進展

同社は2028年までに営業利益率16%を達成する中期財務目標を掲げている。フィリップス氏は「2028年の財務目標を達成する能力に引き続き自信を持っている」と述べた。

直近12カ月(LTM)の営業利益率は13.1%となり、前年の12.7%から改善した。「目標の16%に向けて進展していることを示している」(フィリップス氏)という。

■新たな気候目標を承認、SBTiに提出へ

同社の取締役会は、新たな野心的な気候目標も承認した。これをSBTi(Science Based Targets initiative:科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)に提出し、検証を受ける予定だ。持続可能性への取り組みを一層強化する。

■ ヒアブ(Hiab)について
Hiabは、スマートで持続可能な路上荷役ソリューションの大手プロバイダーとして、最も献身的な人材とパートナーとともに、毎日最高の顧客体験を提供することに注力している。グローバルに展開する自社およびパートナーの販売・サービス拠点3,000カ所以上からなる広範なネットワークを通じて、世界のすべての大陸で事業を展開し、100カ国以上への納入を可能にしている。
2024年の継続事業売上高は約16億ユーロ、従業員数は4,000人超。本社はフィンランド・ヘルシンキ。ヘルシンキのナスダック市場に上場している。​​​​​​​​​​​​​​​​

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