・タタ・スチール向け4基目、液化ガス供給網も強化
エア・ウォーター傘下のAir Water India Private Limited(エア・ウォーター・インディア)は10月20日、インド鉄鋼最大手タタ・スチールのジャムシェドプル製鉄所(ジャルカンド州)に建設中の大型産業ガスプラントを取得し、20年間の長期運転保守契約を締結したと発表した。11月の稼働開始を予定している。
同プラントは酸素生産能力が日量約1,800トン(約52,500Nm³/h)で、酸素・窒素・アルゴンの3ガスを製造。タタ・スチールへのオンサイト供給に加え、併産する液化ガスをインド東部・北部エリアの産業向けに供給する。
エア・ウォーター・インディアは2019年から同製鉄所向けに3基のオンサイトプラントを運営してきた実績を持つ。日本人駐在員の派遣と本国からの遠隔支援により、プラント運転・保守ノウハウを展開し信頼関係を構築。こうした運営実績が評価され、4基目となる今回の案件受注につながった。
■成長市場で攻勢
インド政府は2034年までに粗鋼生産量を現在の年間約1.5億トンから5億トンへ引き上げる目標を掲げており、各鉄鋼メーカーが積極的な設備投資を進めている。製鉄所が集積する東部では造船・電力・インフラ分野、北部では自動車関連産業を中心に産業ガス需要が拡大中だ。
さらに、インド政府主導で半導体製造・設計拠点化の取り組みも進展。北東部アッサム州などで半導体・電子産業の立ち上げが計画されており、製造に不可欠な窒素ガスなど産業ガス供給インフラの重要性が高まっている。
エア・ウォーター・インディアは「鉄鋼向けオンサイトガス案件への注力」と「液化ガス製造拠点の拡充」を基本戦略に据え、インド市場での事業拡大を推進。今回のプラント稼働により、鉄鋼から自動車、半導体まで幅広い製造業の成長を支える供給体制を構築する。
2025年8月の日印首脳会談では、半導体や鉱物資源を重点分野とした「経済安全保障協力イニシアチブ」への合意がなされ、両国政府が日印企業間の協業・投資を後押しする方針が確認されている。同社は日印経済連携の中心的役割を担いながら、インド社会の発展に貢献していく構えだ。