・企業価値約8,170億円、AI・次世代ロボティクス分野で新展開へ
■ 即時的な株主価値の創出と資本効率化へ
ABBのピーター・ヴォーザー(Peter Voser)会長は、「ソフトバンクの提案は、当社取締役会と経営陣による慎重な検討の結果、ロボティクス事業の長期的な価値を正当に反映するものであり、株主に即時的な価値をもたらす」とコメント。売却による資金は「資本配分方針に沿って再投資や株主還元に活用する」とした。
また、モルテン・ヴィーロッド(Morten Wierod)CEOは、「ソフトバンクはAI時代のロボティクスを牽引する最適なパートナーであり、両社の技術融合により新たなイノベーションを創出できる」と述べた。
■ ソフトバンク、「フィジカルAI」構想を推進
ソフトバンクグループの孫正義(Masayoshi Son)会長兼CEOは、「ソフトバンクの次なるフロンティアは“フィジカルAI(Physical AI)”だ。ABBロボティクスとの連携により、人工超知能(Artificial Super Intelligence)とロボティクスの融合を実現し、人類の進化を加速させる」とコメントした。
■ 売却に伴う業績影響と組織再編
ABBは今回の契約締結を受け、報告体制を3事業分野へ再編。2025年第4四半期からはロボティクス事業を「中止事業(Discontinued operations)」として扱い、同事業と一体だったマシンオートメーション部門は「プロセスオートメーション事業」へ統合する。
売却完了後には、約24億ドル(約3,650億円)の税引前帳簿益を計上予定。取引関連費用を差し引いた実質的な現金収入は約53億ドル(約8,050億円)と見込む。分離関連費用は約2億ドル(約300億円)で、その半分はすでに2025年業績見通しに織り込み済みという。また、事業分離に伴う現金税支出は4億~5億ドル(約610~760億円)の範囲になる見込み。
■ ロボティクス事業の現況
ABBロボティクス事業は、世界約7,000人の従業員を擁し、2024年の売上高は23億ドル(約3,500億円)、営業利益率(EBITA)は12.1%を記録。ABB全体売上の約7%を占める。産業用ロボットおよび自動化ソリューションにおいて、先端製造や物流、エレクトロニクス分野を中心に高い競争力を有している。
ABBは「電動化と自動化による持続可能で効率的な未来の実現」を掲げ、グループ全体で約11万人の従業員を擁する世界的テクノロジー企業。今後も中核事業であるエレクトリフィケーションとオートメーション分野に注力し、長期的な成長戦略を維持する構え。
⸻
〈為替換算:1ドル=152円〉
〈取引価値:約8,170億円/帳簿益:約3,650億円/実質収入:約8,050億円〉