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ソフトバンクG、ABBロボティクス事業を8,000億円超で買収

・「フィジカルAI」戦略の要、世界トップ級の産業用ロボット事業を傘下に

ソフトバンクグループ(東京都港区、孫正義会長兼社長)は10月8日、スイスの産業機器大手ABBのロボティクス事業を総額53億7,500万ドル(約8,170億円、152円換算)で買収すると発表した。2026年半ばから後半の完了を目指す。人工超知能(ASI: Artificial Superintelligence)の実現に向けた「AIロボット」分野の強化が狙いで、同社が掲げる4大戦略分野への大型投資が加速している。

■世界的ブランドと販売網を一挙獲得

買収対象となるABBロボティクス(ABB Robotics)事業は、産業用ロボットの開発・製造・販売を手がけ、従業員約7,000人を擁する。自動車、エレクトロニクス、物流など幅広い産業向けに高精度・高信頼性の産業用ロボットを供給しており、世界市場で確固たる地位を築いている。

2024年12月期の売上高は22億7,900万ドル、営業利益ベースの指標であるOperational EBITAは2億7,700万ドル。2023年12月期には売上高24億5,200万ドル、Operational EBITA 3億4,900万ドルを記録しており、収益基盤は堅調だ。

■ASI実現へ4分野に集中投資
ソフトバンクグループは現在、ASI実現に不可欠として(1)AIチップ(2)AIロボット(3)AIデータセンター(4)電力――の4分野に経営資源を集中している。今回の買収は(2)のAIロボット分野を飛躍的に強化する戦略の一環と位置づけられる。

孫会長は「ソフトバンクグループの次のフロンティアは『フィジカルAI』だ。ABBロボティクスとともに世界トップレベルの技術と人材を結集し、ASIとロボティクスを融合させることで人類の未来を切り拓く」とコメントした。

既存投資先との相乗効果に期待
同社はすでにロボティクス分野で複数の投資を実施している。ソフトバンクロボティクスグループ(SoftBank Robotics Group)、米バークシャー・グレイ(Berkshire Grey, Inc.)、ノルウェーのオートストア・ホールディングス(AutoStore Holdings Ltd.)、独アジャイル・ロボッツ(Agile Robots SE)、米スキルドAI(Skild AI, Inc.)などが主な投資先だ。

買収完了後は、ABBロボティクス事業のプラットフォーム、専門知見、グローバルな販売網と、これら既存投資先の技術を組み合わせることで、AIロボティクス分野でのイノベーション加速を目指す。特に生成AIとロボット工学の融合による次世代自動化ソリューションの開発が期待される。

■2026年半ば以降の完了目指す

買収はABBがロボティクス事業をカーブアウトし、スイス・チューリッヒ(Zurich)に持株会社を新設する形で実施される。現ABBロボティクス部門のプレジデント、マーク・セグラ(Marc Segura)氏が新会社の代表に就任する予定だ。

取引完了にはEU、中国、米国を含む各国規制当局の承認が必要で、クロージングは2026年半ばから後半を見込む。ソフトバンクグループは「業績への影響や具体的な日程は確定次第公表する」としている。

ABBのモーテン・ヴィーロッド(Morten Wierod) CEOは「世界がAIを基盤としたロボティクスの新時代に入りつつある中、ソフトバンクグループはABBロボティクス事業と従業員にとって最適な場となる。両社の強みを組み合わせることで、この分野におけるテクノロジーリーダーとしての地位をさらに高められる」と語った。

産業用ロボット市場では人手不足や自動化需要を背景に成長が続いているが、AI技術の進化により「考えて動く」高度な自律型ロボットへの期待が高まっている。今回の大型買収により、日本企業が世界的なAIロボティクス企業群の中核を担う可能性が現実味を帯びてきた。

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