・生産5%減予測で改革の迅速な実行を求める
・貿易摩擦、規制負担、コスト上昇が機械工業を直撃
ドイツ機械工業会(VDMA) :2025年9月18日
■上半期生産実績4.5%減、下半期はさらに悪化
2025年上半期の実質生産高は前年同期比4.5%減となり、第2四半期では4.9%減とマイナス幅が拡大した。技術的設備稼働率は7月時点で77.6%にとどまり、業界平均を大幅に下回る状況が続いている。
一方で受注動向には明るい兆しも見える。1月から7月までの実質受注高は前年同期比2%増を記録した。しかし、これらの要因を総合的に勘案した結果、VDMAは2025年の生産予測を当初のマイナス2%からマイナス5%へと大幅下方修正した。
■2026年も微増1%の慎重な見通し
2026年については、技術革新とデジタル化の進展、欧州域内市場の強化により軽微な回復を期待するものの、実質生産増加は1%程度にとどまると予測している。カヴラート会長は「政治が約束した改革の秋が実際に効果を発揮することが前提条件」と慎重な姿勢を示した。
■主要リスク要因が山積
2026年に向けた主要なリスク要因として、VDMAは以下の点を挙げている:
貿易摩擦のさらなる激化と新たな関税措置、地政学的緊張の拡大、国家債務増大とインフレ率上昇に伴う金利上昇、米国による鉄鋼・アルミニウム制裁関税の機械製品への拡大適用の脅威。
■米国制裁関税、最大200%の脅威
特に深刻なのは米国市場での制裁関税問題である。現在、米国向け機械輸入の約40%が金属含有率に対して50%の関税を課されている。さらに問題となっているのは、この対象リストが4ヶ月ごとに見直され、拡大される可能性があることだ。
企業にとって最大の課題は、製品の金属含有率計算と鋼材・アルミニウムの原産地証明である。多数のサプライヤーを抱える企業では、詳細データの入手が困難で、最悪の場合、製品全体に200%の関税が課される可能性がある。このリスクを回避するため、一部企業は輸出を停止する事態も生じている。
■EU政策への注文
カウラス会長は、ウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長の関税合意が「安定性と予見可能性をもたらす」との発言に明確に反論した。同会長は「EU委員長の施政方針演説における経済政策への言及は非常に限定的だった」と批判し、メルコスール協定の早期発効やインドとの貿易協定締結を求めた。
域内市場完成に向けたロードマップと規制簡素化の継続は評価したものの、「様々な法案パッケージが目標に到達する前に過度な負担を背負わされてはならない」と警告した。
■企業の競争力強化も課題
政治だけでなく、企業自身も競争力強化に取り組む必要がある。VDMAはコンサルティング会社マッキンゼーと共同で「新時代における競争力」研究を実施し、運営の卓越性から地政学的レジリエンスまで8つの成功要因と、徹底的なコスト管理から新市場開拓、サービス・アフターセールス事業強化まで6つの戦略的アプローチを提示した。
■VDMAの欧州化戦略
VDMAは欧州最大の機械工業団体としての地位を明確化するため、正式名称から「ドイツ機械・設備製造業協会」の表記を削除し、「VDMA e.V.」に変更した。新たなスローガン「Advancing Europe’s Machinery Industry」とともに、欧州全体の機械工業を代表する組織としてのブランド戦略を推進している。