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大成建設、マルチリンク通信で建機の超遠隔操縦に成功

・オフィスから現場作業を可能にし、省人化と生産性向上に道

大成建設は9月18日、群馬県藤岡市の下久保ダム上流域において、直線距離で約90km離れた神奈川県横浜市戸塚区の大成建設技術センターから複数台の建設機械を遠隔操縦し、堆砂処理作業を実施することに成功したと発表した。

この実証は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の一環として行われたもので、建設現場の省人化と効率化を目的とした研究開発の成果である。

同社は、就業者が長距離通勤や転勤をせずに所属オフィスから作業できる環境整備を目指し、ダム堆砂処理向けに複数台の建設機械を超遠隔から操作できる「省人化システム」を開発。従来のWi-Fiや小電力無線が数百m程度の通信距離に制約されていたのに対し、今回のシステムでは複数のLTE回線と衛星通信を同時活用する「マルチリンク」技術を採用し、ソリトンシステムズ製「Zaoシリーズ」を導入。これにより電波環境が脆弱な河床部でも安定した通信を実現した。

実証では、油圧ショベルとクローラ型ダンプトラックを約90km離れた拠点から確実に操作し、堆砂処理を実施。また、同社の「T-iDigital Field」のデジタルツイン技術により、建機の配置・稼働状況をリアルタイムで可視化するとともに、作業員と建機の距離を常時監視し、安全性を担保した。

同社はSIP事業以外でも超遠隔操縦を独自に実証している。5月には東京都大田区発注の呑川合流改善貯留施設工事で、愛知県豊川市から約230km離れた現場のケーソンショベルを遠隔操作。8月には国土交通省発注の玉島笠岡道路工事で、福岡市南区から約300km離れた現場の油圧ショベルとクローラ型ダンプを操作し、いずれも成功を収めた。

大成建設は今後、マルチリンク通信による建機の超遠隔操縦の試行を継続し、ダム堆砂処理などインフラ維持管理の効率化を推進するとともに、社会実装に向けて官民連携を強化していく方針である。

ニュースリリース

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