・AIデータセンター需要急増に対応、バージニア州に変圧器工場新設
日立製作所は9月5日、子会社である日立エナジーが、現地時間9月4日、米国における送配電機器製造能力強化を目的とした10億ドル超(約1,480億円、148円換算)の大型投資を行うと発表した。これは米国電力業界史上最大規模の投資となる。
■バージニア州に米最大の変圧器工場
同社は新工場建設により、バージニア州南部で825名以上の新規雇用を創出。エンジニアリング、製造、オペレーション分野での長期雇用機会を提供する。
■AI関連需要の急拡大が背景
今回の投資は、トランプ政権のAIアクションプランに沿ったAIデータセンター拡大により、変圧器や高電圧機器の需要が急増していることに対応するもの。電力用変圧器は、高圧送電、発電、AIデータセンター、大規模産業を支える重要インフラ機器として位置づけられる。
クリス・ライトエネルギー長官は「電力供給を維持し、AI競争に勝ち、製造業の再興を進めるためには、より多くの信頼できるエネルギーが必要」とコメント。日立の投資を歓迎した。
■90億ドル規模のグローバル投資の一環
今回の米国投資は、日立エナジーが2020年から実施している合計90億ドル超のグローバル投資プログラムの一環。同社は製造能力、研究開発、エンジニアリング、パートナーシップ強化を通じ、世界のエネルギーシステムの信頼性向上を目指している。
日立製作所の德永俊昭社長兼CEOは「米国は日立にとって極めて重要な市場。信頼性と持続可能性を備えたソリューションへの需要が加速する中、米国のエネルギーの未来を支える強いコミットメントを示すもの」と述べた。
■政府・州政府が全面支援
バージニア州のグレン・ヤンキン州知事は「825名の新雇用はバージニア州南部に大きな変革をもたらす」と期待を表明。新規雇用者向けの大規模住宅プロジェクトも発表し、96戸の新住宅を建設する計画を明らかにした。
マーク・ワーナー上院議員、ティム・ケイン上院議員、ジョン・マグワイア下院議員らも今回の投資を歓迎。米国のエネルギー安全保障強化と地域経済活性化への貢献を評価した。
■業界への影響
日立エナジーCEOのアンドレアス・シーレンベックは「あらゆる業界で変圧器需要が急増する中、米国国内での大型変圧器製造は強固なサプライチェーン構築と製造ボトルネック解消に極めて重要」と説明。電化を支援するグローバルリーダーとして、米国市場への重要投資を継続する姿勢を示した。
今回の投資により、米国の送配電網の安全性とレジリエンス向上、国内サプライチェーン強化が期待される。AI時代のエネルギーインフラ整備において、日本企業の技術力が重要な役割を担うことになる。
・日立エナジーは60カ国に5万人以上の従業員を擁し、約2兆4,000億円の事業規模を持つ送配電網技術のグローバルリーダー。140カ国以上での豊富な導入実績を有している。