・通期業績予想も下方修正、関税政策の影響を懸念
フォークリフト大手の三菱ロジスネクストは8月27日、2025年度第1四半期(4-6月期)の連結決算の説明資料を発表した。それによると、売上高は前年同期比3.7%減の1,596.7億円、のれん等償却前営業利益は14.7%減の82.5億円と減収減益。親会社株主に帰属する四半期純利益は77.3%減の17.6億円と大幅な減益を記録した。
■為替影響と米州競争激化が重荷
業績悪化の主因は為替の円高影響と、主力市場である米州での競争激化にある。円高により約66億円の減収影響を受けたほか、米州では関税政策による市場の不透明感から需要が減少。競争激化により受注確保のための販売コスト増加も業績を圧迫した。
地域別では、日本は前年同期比微減の452.5億円、欧州は6.4%増の278.5億円、APAC・中国は3.0%増の76.5億円と堅調だったが、米州は8.0%減の789.1億円と大幅減収となった。
■セグメント別は明暗分かれる
セグメント別では、国内事業が価格適正化の寄与や経費抑制により増益を確保したものの、海外事業では米州の売上減少やミックス悪化、販売コスト増加により大幅な減益となった。
■通期業績予想を大幅下方修正
同社は通期の連結業績予想も大幅に下方修正した。売上高は6,750億円から6,500億円(250億円減)、のれん等償却前営業利益は420億円から330億円(90億円減)へそれぞれ引き下げた。
修正の背景について同社は「米経済指標が製造業の活動縮小を示唆しており、米国産業車両協会(ITA)も市場見通しを下方修正した」と説明。さらに「エンジン車を中心に米州の競争環境が想定以上に悪化しつつあり、受注確保のための販売コスト増加に加え、価格転嫁も全額実施が困難」との見通しを示した。
■フォークリフト市場は地域差拡大
世界のフォークリフト市場を見ると、地域差が鮮明になっている。国内需要は安定的・堅調に推移し、欧州も一時的な減少から持ち直しの兆しを見せている。中国でも景気減速下ながら物流機器需要は堅調を維持している。
一方、米州では代理店の在庫調整がほぼ収束したものの、関税政策による景気の先行き不透明感から4月以降の需要が減少傾向にある。ITAも市場予測を下方修正するなど、厳しい環境が続いている。
■構造改革効果は限定的
同社では欧州工場の閉鎖効果など構造改革を進めているが、米州市場の急速な環境悪化により効果が相殺されている状況。
■今後の見通し
同社は「米国関税政策がグローバル各地域での景気減速やコストアップを引き起こすことを懸念している」とし、今後の見通しをより厳しいものと位置づけている。主力の米州市場での競争激化が長期化すれば、さらなる業績への影響も避けられない情勢。
配当については年間24円を維持する方針を示しているが、収益力の回復が急務となっている。
<決算概要(2025年度第1四半期)>
- 売上高:1,596.7億円(前年同期比3.7%減)
- のれん等償却前営業利益:82.5億円(同14.7%減)
- 営業利益:61.5億円(同12.1%減)
- 四半期純利益:17.6億円(同77.3%減)
<2025年度通期業績予想(修正後)>
- 売上高:6,500億円(期初予想から250億円減)
- のれん等償却前営業利益:330億円(同90億円減)
- 営業利益:240億円(同90億円減)
- 当期純利益:110億円(同60億円
- 2025年度第1四半期決算説明資料