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ファナック、産業用ロボット新商品4点を発表 – 高負荷加工から遠隔操作まで多様化するニーズに対応

 ファナックは8月22日、産業界の多様化するニーズに対応するため、機械加工、食品・クリーンルーム、高速搬送、遠隔操作の各分野において革新的なロボット商品・機能をホームページ上に発表した。これらの新商品は2025年5月に開催された同社の新商品発表展示会で実アプリケーション動作と合わせて出展されている。

■機械加工領域の進化:大型部品対応ロボット「M-810」

 自動車産業におけるギガキャストなど部品の大型化に伴い、6軸多関節ロボットによる機械加工の需要が急速に拡大している。ファナックは従来のM-800をさらに進化させた機械加工ロボット「M-810」を開発し、販売を開始した。
 M-810は、従来機種と比較して1.3倍の動作領域と3.4倍の切削負荷に対応する高性能機種だ。高剛性アームと高精度キャリブレーション技術、動作中の加工反力を受けても軌跡を維持する独自技術により、鉄部品のミーリング加工や穴あけ、タップ加工まで可能にしている。
 また、IP67準拠の高い耐環境性能により、切粉が舞うドライ加工から切削液を使用するウェット加工まで幅広い作業環境に対応。6軸多関節ロボットの自由度を活かし、ワークに対して様々な方向からアプローチできる柔軟性も特長だ。出荷開始は2025年6月を予定している。

■衛生・清潔性を追求:食品・クリーンルーム仕様ロボット
 人手不足解消と生産性向上を目的とした自動化ニーズの高まりを受け、ファナックは食品産業や電子機器産業に特化したロボットを開発した。小型ハンドリングロボット「LR Mate/10-11A」と中型ハンドリングロボット「M-710/70-21D」 「M-710/50-26D」に食品・クリーンルーム仕様を新たに追加している。
 これらの仕様では、FDA認証を受けた安全なエポキシ塗料の採用、手首フランジへのステンレス素材の使用、NSF H1グレードの食品機械用グリースの全軸採用など、食品安全性に徹底的に配慮。IP67準拠の防塵防滴性能と曲面を多用したスムースな外観により、水滴が溜まりにくい構造を実現している。
 LR Mate/10-11Aは可搬質量10kg、最大リーチ1.1mで本体質量46kgの軽量設計により、狭いスペースでの設置や天吊り・壁掛けにも対応。M-710シリーズは70kgと50kgの2つの可搬能力を選択でき、重量物の搬送自動化に貢献する。

■太陽光発電産業を加速:高速・高デューティ棚置型スカラロボット「SR-9iA/R」
 中国市場を含む太陽光発電パネル生産の急拡大を受け、ファナックは発電セルモジュール搬送作業に特化したスカラロボット「SR-9iA/R」を開発した。9kg可搬、620mmリーチの棚置型設計が特徴だ。
 最大の特長は世界最高レベルの処理能力である。2.5kgの負荷重量、水平搬送距離500mm、垂直方向揚程100mmの条件下で、1往復の動作を0.7秒台で完了し、24時間連続稼働が可能。この高速性能を支えるため、第一・第二アームの剛性にも配慮した設計を採用している。
 棚置型設計により、コンベヤ上空をロボット設置スペースとして活用でき、コンパクトな生産ラインの構築を実現。出荷開始は2025年4月を予定している。

■危険作業からの解放:遠隔操作ロボット機能
 研磨作業、切断作業、鋳造工程における高温液体金属のノロ掻き作業など、これまで人の感覚と技能に頼らざるを得なかった過酷で危険な作業に対し、ファナックは革新的な遠隔操作ロボット機能を開発した。
この機能では、作業者が安全な場所でハンドガイドを取り付けたリーダロボットを操作し、危険な場所にあるフォロワロボットが全く同じ動きを忠実に再現する。フォロワロボットは作業対象物からの力を検知し、作業者があたかも手元で直接力を感じているような操作感を実現。これにより、微妙な力加減が必要な作業も遠隔で実施できる。
 さらに、フォロワロボットの軌跡と速度を記録し、後から同じ動きを再生する機能により、熟練作業者の手技をロボットが正確に再現することも可能だ。出荷開始は2025年8月を予定している。

■産業界の未来を見据えた取り組み
 これらの新商品・新機能は、ファナックが産業界の多様化するニーズに対応し、自動化技術の可能性を拡げる取り組みの一環である。大型部品加工から食品安全、高速搬送、そして人間の技能の継承まで、幅広い産業分野でロボット技術の新たな活用領域を切り拓いている。

 詳細情報については、ファナック公式ウェブサイト(https://www.fanuc.co.jp/https://www.fanuc.co.jp/を参照。

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