・除草作業時間8割削減で有機農業面積拡大へ
農研機構は7月22日、同機構を中心とする「スマ農アイガモロボコンソーシアム」が、水田用自動抑草ロボット「アイガモロボ®」の改良と普及を加速させる3年間のプロジェクトを開始したと発表した。この取り組みにより、水稲有機栽培の最大の課題である除草作業の大幅な省力化を実現し、日本の有機農業面積拡大を目指す。
■有機農業拡大の壁となる「雑草対策」
2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに有機農業の取組面積を100万ヘクタールまで拡大することが目標として掲げられている。この目標達成には、日本の農業で大きな割合を占める水稲での有機栽培普及が欠かせない。
しかし、現実には水稲有機栽培において除草・抑草作業が大きな負担となっている。通常の栽培法と比べて多くの時間と労力を要する「雑草対策」が、有機栽培への取り組み拡大を阻む最大の壁となっているのが現状。
■改良された「IGAM2」の特徴
2025年3月に販売が開始された最新型「IGAM2」は、従来機種から大幅な改良が施されている。軽量化と低価格化を実現し、中山間地域に多く見られる狭小水田や不整形区画の水田といった条件不利ほ場でも導入しやすくなった。
この自動抑草ロボットは、水田内を自律的に走行しながら雑草の発芽や成長を抑制する仕組みで、従来の人力による除草作業を大幅に軽減できる革新的な技術である。
■産学官連携による包括的な取り組み
今回のプロジェクトでは、農研機構、NEWGREEN、井関農機、BASFジャパン、JA三井リースに加え、新潟県、長野県、島根県の農業試験研究機関がコンソーシアムを形成。さらに全国11県30の経営体が協力機関として参画する大規模な取り組みとなっている。
研究機関、メーカー、行政、生産者が一丸となって、多様なほ場条件や有機農法への対応を図る。土質や用途に合わせたブラシの改良、様々な条件に応じた栽培技術の構築、体系化された技術として生産現場への普及という包括的なアプローチが特徴。
■スマート農業技術との連携で相乗効果
本プロジェクトでは、IGAM2単体での効果にとどまらず、自動水管理装置や栽培管理支援システムとの連携も重視している。これにより栽培管理作業全体の省力・軽労化を図り、水稲有機栽培への取り組みをより容易にすることを目指している。
■期待される効果と将来展望
2025年から2027年までの3年間で実施される本事業により、水稲有機栽培における除草作業時間の8割削減という大幅な省力化が期待されている。これは有機栽培への参入障壁を大きく下げる効果があり、結果として水稲有機栽培面積の早期拡大につながると予想される。
日本の農業が直面する労働力不足と環境負荷軽減という課題に対し、最新のロボット技術とスマート農業システムを組み合わせたこの取り組みは、持続可能な農業の実現に向けた重要な一歩となりそうだ。有機農業100万ヘクタール達成という「みどり戦略」の目標実現に向けて、このプロジェクトの成果が注目される。