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クボタ、有価金属を高効率に回収する新型「メタル分離機」を開発、都市鉱山の活用を加速

・ごみ焼却灰からの有価金属回収実証を完了

 クボタは7月14日、廃棄物焼却灰を高温で処理して得られる「溶融スラグ」から金や銅などの有価金属を高効率に回収する新型「メタル分離機」を開発し、長野市での実証実験を通じて従来比2倍以上の回収率を達成したと発表した。回収した金属は製錬メーカーの購入基準を満たす高濃度で、都市鉱山の新たな活用に向けた技術的なブレークスルーとなる。

■従来比2倍以上の高回収率と高品質を実現
 クボタが開発した新型メタル分離機は、同社の溶融炉と組み合わせることで、従来課題となっていたスラグとの混入を抑えつつ、有価金属を効率的に回収できる構造を採用。長野市の「ちくま環境エネルギーセンター」で2025年1月から4月にかけて実施された実証では、約200トンの溶融スラグから約1トンの金属を回収。金や銀、銅、白金、パラジウムなどを含むメタルのスラグ混入率は10%以下に抑えられ、回収した金属の品質が製錬原料として通用することが確認された。

 特に注目されるのは、金の含有量が約400〜530mg/kgに達した点で、これは一般的な金鉱石の約100倍に相当。長野市の年間スラグ発生量約900トンを基に試算すると、2,700万〜3,600万円(2025年6月時点の相場)相当の価値があると見積もられる。

■都市鉱山の「未活用領域」に道
 ごみ焼却灰や下水汚泥などに含まれる有価金属は、濃度が低いため従来は分離・回収が困難とされ、埋立や建設資材としての再利用に限られていた。クボタはこれまで、廃棄物を約1300℃以上で溶融し、有害物質の無害化とともに再資源化を図る「回転式表面溶融炉」を開発・提供してきたが、今回のメタル分離機の開発により「価値ある金属資源」の抽出まで可能となり、いわば都市鉱山の“未開拓ゾーン”に光が当たる形となった。

 この技術は、香川県・豊島で発生した国内最大級の不法投棄事件の処理にも活用された実績があり、環境保全と資源循環の両面で貢献が期待される。

■年内に商用化、全国展開めざす
 クボタはこのメタル分離機を2025年中に商用化し、全国の自治体や廃棄物リサイクル事業者に提供する計画。今後は、同社の溶融技術と分離技術をパッケージ化して展開し、都市鉱山の活用を通じた資源循環の社会インフラ構築を目指す。

 地域に根ざした資源循環モデルとして、長野市のような取り組みが全国へ波及すれば、金属資源の国内回収力向上や経済安全保障にも寄与する可能性がある。

※用語解説
・溶融スラグ:廃棄物を約1300度以上で加熱し、冷却して得られるガラス状の物質。
・メタル回収率:溶融スラグ中の有価金属のうち、実際に回収できた割合。

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