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米国製造業復活を阻む移民制度の課題、AEMが労働力不足の深刻な影響を警告

 AEM(米国機械製造業者協会):2025年6月2日

 米国の製造業が重要な局面を迎えている。トランプ政権は国内生産の回帰と産業基盤の強化に再び焦点を当て、規制緩和、熟練労働力の育成、製造業者の税負担軽減を目的とした政策を発表している。しかし、これらの政策が製造業の強化と米国内での雇用回復を目指す一方で、継続する労働力不足により多くのポジションが埋まらない可能性がある。移民政策の現代化なしには、欠員が続き、米国製品の顧客への納期遅延が生じる恐れがある。

■大量の労働許可取り消しが迫る
 今後数週間で、バイデン政権時代のスポンサーシップ制度を通じて合法的に入国した約53万2,000人の移民が、法的地位と就労権を失う可能性がある。これらの人々は、ベネズエラ、ハイチ、ニカラグア、キューバなどの国から、不法な国境越えを減らし、労働力への秩序だった経路を提供するために設計された、審査済みの人道的仮釈放制度を通じて来米した。
 議会または政権が行動を起こさない限り、数十万人の就労許可を持つ個人が一夜にして労働市場から排除されることになる。
 同時に、最高裁判所は米国に居住する35万人のベネズエラ人が一時保護資格と就労許可を失うとの判決を下した。

■製造業への深刻な影響
 これらの急激な変化による人道的な結果を超えて、深刻な経済的影響も懸念される。機械製造業界だけでも8万5,000人以上の未充足職種に直面する可能性がある。製造業全体の求人は約46万2,000件に上り、農業や建設業などの関連分野も同様の圧力下にある。
 労働統計局によると、米国は少なくとも2032年まで毎年11万6,000以上の農業関連職種を埋める必要がある。これらは強い需要と賃金上昇にもかかわらず、しばしば人手不足に陥る職種である。

■労働力参加率の低迷
 同時に、米国の労働力参加率はパンデミック前の水準を下回ったままである。国内の労働市場で活動する労働者は2020年と比較して約200万人少ない。国内移住により人口流出が続く地方部では、移民が地域経済を支える重要な役割を果たしている。
 イリノイ州、ミシガン州、オハイオ州などの主要製造業州では、移民労働力がサプライチェーンの維持と工場の人員確保に重要な役割を担っている。

■既存労働力の有効活用が鍵
 皮肉なことに、この労働力は既に国内に存在している。彼らは税金を納め、家族を支え、米国産業の競争力維持に貢献している。就労能力を剥奪し、国外退去で脅かすことは、単なる人道的コストではなく経済的コストでもある。

■超党派での解決策模索
 昨年、超党派の上院議員グループが、より厳格な執行と意義のある改革を組み合わせた国境・移民法案を提案した。最近では、下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長(オハイオ州選出、共和党)が追加の国境警備予算可決後、超党派解決策への開放性を表明している。
 過去に政治的対立が進展を阻んできたものの、上院提案とジョーダン委員長の発言は、移民問題が超党派の課題となり得ることを示している。

■有権者の支持と経済的必要性
 有権者の80%以上が、国境警備と労働力不足やインフレに対処する的を絞った移民解決策の両方を追求する候補者を支持している。この両方を実現する道筋は存在する。
 中国との競争、国内生産の回復、米国中間層の強化を望むなら、目前の労働力危機を無視することはできない。これは高技能・必要不可欠な労働者のための合法的移民チャネルの拡大を意味する。米国の大学で教育を受けた国際学生が滞在し貢献することを容易にすることを意味する。そして、特に子どもとしてこの国に連れてこられた人々を含む、既にここで生活し、働き、貢献している個人のための合法的地位への道筋を作ることを意味する。

■現実的な移民制度改革が急務
 これはイデオロギーの問題ではなく、現実の問題である。政治的瞬間ではなく、経済のニーズを反映する移民制度が必要である。米国製造業の活性化は可能である。しかし、それには関税や税額控除以上のもの——人材——が必要である。米国に雇用を戻したいなら、それを埋める労働者がここにいることを確実にしなければならない。それは移民制度の現代化から始まり、後回しにはできない。米国経済と製造業界は待つ余裕がないのである。

 *本記事は、AEM(米国機械製造業者協会)政府・業界関係担当上級副会長Kip Eideberg (キップ・アイデバーグ)氏による寄稿で、Washington Examiner(ワシントン・エグザミナー紙)に掲載されたものを同紙の許可を得て再掲載している。

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