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SMC、2025年3月期は増収減益、新戦略で成長加速へ:決算説明資料より

 SMCは2025年3月期の決算を発表し、円安の恩恵を受け増収となったものの、半導体関連需要の遅れや自動車関連の設備投資先送りにより減益を計上した。一方で、2026年3月期に向けては、半導体市場の回復やEV関連需要の増加を見込み、積極的な投資と多角化戦略で売上・利益の拡大を目指す姿勢を鮮明にしている。

■2025年3月期決算概要:半導体停滞響くも年間配当1,000円を維持
 2025年3月期の売上高は7,921億円、営業利益は1,902億円となった。日本、北米、韓国では半導体関連の需要回復が遅れ、自動車関連も設備投資の先送りが影響。工作機械関連も中華圏を除き調整局面が続いた。しかし、中華圏の電機関連は回復基調を示した。設備投資は当初計画の1,000億円を上回る1,078億円を実施。期末配当は500円とし、年間配当は1,000円を維持。約250億円の自己株式取得と合わせ、総還元性向50%を維持した。

■2026年3月期ガイダンス:過去最大の設備投資1,800億円を計画
 2026年3月期は、半導体回復やEV関連需要増、自動化・省力化ニーズの高まりを背景に増収増益を見込む。売上高は8,500億円、営業利益は2,150億円を計画。米国関税引き上げの影響(売上80億円減、粗利益100億円減)を織り込みつつも、販売数量増と稼働率改善で増益を目指す。設備投資は開発力強化と生産能力確保、BCP対応のため、過去最大となる1,800億円を計画。配当は年間1,000円を継続し、300億円の自己株式取得枠を設定し、総還元性向50%を確保する。

■中長期の重点施策:グローバル展開と強固な事業基盤
 SMCは中長期的に、グローバルフットプリントを活かした販売戦略で売上成長とシェア拡大を目指す。広範な品揃えと短納期体制を強みに「ワンストップショップ」として顧客ニーズに応える。積極的な設備投資による生産能力強化、生産の複線化、人的資本投資で競争力を向上。顧客要望を迅速に製品開発に繋げ、小型・軽量・環境配慮型製品を充実させる。事業環境の急変にも対応し、顧客基盤拡大の好機と捉え投資を継続。株主還元では、1株1,000円配当と自己株式取得による総還元性向50%以上を維持する方針。

■2025年度の施策:営業・製造・開発の連携強化
 2025年度は、直販・代理店営業の強化、製品・業種の多角化、エンドユーザーへの直接営業強化を推進。販売価格の適正化も図る。製造面では、サステナブルな製品供給のための設備投資を継続し、特にベトナム工場への投資・生産移管を進める。製造・物流の自動化・省人化で生産性を向上させ、需要変動に対応できる体制を確立。在庫の適正管理にも注力する。開発では、顧客要望を製品に繋げる開発生産性向上、グローバル連携と優秀な人材確保を進める。

■中国市場の状況と戦略:国産化需要と「地産地消」推進
 中国市場は2024年度前半の内需低迷から後半にかけて回復基調に転じ、スマホ・家電を中心に需要が回復。米国との競争激化を背景に、半導体・半導体製造装置、医療関連設備の国産化が進む。SMCは中国市場で販売数量を伸ばし、ベトナムへの生産移管で稼働率が低下した中国工場の生産を増やすことで利益率改善に成功。米国関税措置の影響は限定的と見ている。150億円程度の投資を計画し、国産品優先の流れに対応した「地産地消」と現地部材採用によるコストダウンを推進。物流倉庫や開発拠点への投資も行う。

■多角化による需要創出:非空圧製品と新分野開拓
 SMCの販売製品は、約75%を占める空気圧製品に加え、非空圧製品の拡大に注力する。非空圧製品は市場シェアが低く、成長余地が大きいと判断。また、販売先業種の多角化を進め、半導体・電機、自動車、工作機械といった既存の強みを持つ産業に加え、食品・医療、資源、酪農・水産・農業、水処理といった新たな分野での販売拡大を図る。

■チラー戦略:半導体向け高機能化と市場拡大
 SMCは「ドライヤー」技術を応用し、温度調節装置「チラー」を開発。半導体産業向けに高精度な温度調節機能と省エネ性能が評価され、需要が高まっている。将来的にはチラー事業で売上高1,000億円、当社売上高の1割を目指す。特に、消費電力の低さと環境性能の高さが強みであり、GWP値1のCO2冷媒を用いた環境対応チラーは大手自動車メーカーからも好評を得ている。

■設備投資計画・進捗:新技術センター、遠野サプライヤーパークが鍵
 2025年度は、新技術センターと遠野サプライヤーパークの完成に伴い、過去最大の1,800億円の設備投資を計画。これにより生産余力拡大、生産の複線化、地産地消への対応、サプライチェーン整備、老朽化設備の更新が一段落する見込み。自動制御機器の需要は中長期的に拡大すると想定されており、これらの投資は持続可能な供給能力の確保とグローバル展開の加速に貢献する。

 

■遠野サプライヤーパーク:協力会社との共存共栄
 2025年8月に完成予定の遠野サプライヤーパークは、当社遠野工場の隣接地に協力会社が入居する形で、高技術力を持つ企業と密接に連携し、生産性向上とサステナビリティ向上を目指す。主要協力会社との連携により、受注への柔軟な対応と納期短縮による販売機会拡大を図る。製造DX連携による合理化・コストダウン、当社製品導入による協力会社の自動化・省エネ化も推進し、協力会社と共に成長するモデルを構築する。

■新技術センターへの投資:グローバル開発体制を強化
 技術部門の開発能力向上とサステナビリティ向上のため、国内外のテクニカルセンター(TC)を拡充。中核となる千葉県柏市の新技術センター(2025年9月完成予定)を中心に、米国、ドイツ、英国、中国の海外TCにも積極投資を行う。これにより、グローバルで優秀な開発人材を確保し、各TC間の連携による開発期間短縮と顧客要求への迅速な対応を実現する。
 
 SMC 2024度決算説明会資料
 

 

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