市場調査会社The Business Research Company(TBRC)は、フルードパワー機器(油圧機器、空気圧機器など)の世界市場について、2024年の市場規模が324億9,000万ドルから、2025年には349億2,000万ドルに拡大し、年平均成長率(CAGR)は7.5%に達するとの予測をまとめた。
建設・インフラ開発の活発化、自動車産業向け需要、鉱業やマテリアルハンドリングの用途拡大、エネルギー・航空宇宙・防衛分野での活用増が市場拡大を後押ししている。
また、同市場は今後も高成長が続く見通しで、2029年には476億ドルに達し、CAGRは8.1%に上昇すると見られる。再生可能エネルギーへの投資拡大、エネルギー効率化の推進、Eコマースと物流分野の発展、電気自動車(EV)とハイブリッド車の普及、そして新興国でのインフラ整備などが成長要因に挙げられる。
予測期間中の主要トレンドとしては、インダストリー4.0関連技術の統合、油圧技術の進化、エネルギー効率ソリューションの普及、油圧流体の技術進歩、状態監視と予測保全の重視などが挙げられる。
■用途・製品分類と市場セグメント
レポートでは、フルードパワー機器市場を以下の通り分類している。
•種類別:油圧、空気圧
•製品タイプ別:ポンプ、モーター、バルブ、シリンダー、アキュムレーターおよびフィルター、その他
•用途別:建設、自動車、石油・ガス、食品加工、包装、半導体、その他
さらに、油圧分野ではポンプ、シリンダー、バルブ、モーター、アキュムレーターに分類され、空気圧分野ではシリンダー、バルブ、コンプレッサー、アクチュエーター、アクセサリが対象となる。
■食品・飲料分野の需要が市場拡大を牽引
食品・飲料業界からの需要増が、流体動力機器市場の成長を加速させている。食材の加工、搬送、包装など多様な工程でフルードパワー機器の導入が進む。米Common Thread Collectiveが2022年に発表した調査によれば、世界の食品・飲料売上高は2021年の4,353億ドルから2022年に5,060億ドルへ増加。2025年には8,570億ドルに達するとされ、関連機器需要の増加が見込まれている。
■建設ブームも成長の追い風に
建設業の活発化も成長の大きな要因となっている。英国国家統計局によると、2022年の新規建設工事総生産額は前年比15.8%増の1,329億8,900万ポンドと過去最高を記録した。建機に使用される油圧システムなどへの需要が今後も堅調に推移すると見られる。
■主要企業の顔ぶれ(あくまでもTBRCの選定によるもので、他の大手メーカーが抜けています)
世界のフルードパワー機器市場には、Hengli America、Eaton、Parker Hannifin、川崎重工業、Atos、Dover、Bosch Rexroth、Alfa Laval、Festo、Flowserve、Crane Holdings、Hydac、Graco、Colfax、Helios Technologies、Christian Bürkert、Circor、Moog、Sparrows Offshore、Bucher Hydraulics、Oilgear、Casappa、Duplomatic、Hawe Hydraulik、Fluid Systems、ダイキン工業、Daman Products、Fluid-Power Equipment、Applied Fluid Power、Hydraulics International、BVA Hydraulicsなどが名を連ねている。
■業界再編の動きも加速
業界では近年、戦略的提携やM&Aが活発化している。Bosch Rexrothは2022年、オーストリアのAGILOXと提携し、自律移動ロボット市場に参入。Parker Hannifinは同年2月、Cumminsと連携し、モバイルIoTプラットフォームを活用したエンジン監視ソリューションを発表した。
さらに2023年5月には、米FSC(Fluid System Components)がカナダのNorcan Fluid Powerを買収。製品群の強化と市場拡大を図った。Norcanは油圧・空圧・電動パネルやマニホールドなどを手がける。
■ブランド刷新と革新の流れ
企業ブランドの刷新も注目されている。米Motion Industriesは2022年6月、「Mi Fluid Power Solutions(Mi FPS)」を立ち上げ、油圧・空圧・電子制御・電気機械技術の統合ソリューションを展開。潤滑・ろ過・プロセスポンプや産業用工具など、包括的な製品ラインを打ち出した。
■地域別ではアジア太平洋が最大市場
地域別では、2024年の最大市場はアジア太平洋地域。今後は北米が最も急速に成長すると予測されている。対象地域には、アジア太平洋、西欧、東欧、北米、南米、中東、アフリカが含まれる。対象国は豪州、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、日本、ロシア、韓国、英国、米国、カナダ、イタリア、スペインなど。
■市場評価の定義と測定方法
本レポートでは、フルードパワー機器市場を、油圧フィルター、ゲージ、コントロールバルブ、タンク付属品などの販売で構成。市場価値は工場出荷価格ベースで計測され、製造業者や開発業者が提供するサービスも含まれる。再販や製品組込みによる間接収益は除外される。