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ABB、仏ブライトループ社を買収 産業車両・船舶の電動化を加速

 スイス・チューリッヒ発――ABBは2025年5月21日、仏ブライトループ(BrightLoop)社の買収に合意したと発表した。産業用オフハイウェイ車両(非舗装路を走行する作業車)や船舶向けの電動化を一層強化する戦略の一環で、ブライトループの高性能パワーコンバーター技術を取り込み、厳しい環境下でも効率よく稼働する次世代エネルギーシステムの提供体制を強化する。取引は2025年第3四半期の完了を予定しており、規制当局の承認などを条件としている。買収額は非公表。

 ABBは今回の取引でブライトループの株式93%を取得し、2028年までに残り7%の取得を予定している。買収後も現経営陣は引き続き事業の中核を担う。

 ブライトループは2010年にパリで創業し、従業員数は約90人。2024年の売上高は約1,600万ユーロで、近年は産業界における急速な電動化ニーズの高まりを背景に急成長を遂げている。特に、高効率かつ双方向の電力変換を可能にするDC/DCコンバーター技術を強みとしており、モータースポーツで培われた高信頼性・高性能の製品は、ABBが冠スポンサーを務める「FIAフォーミュラE選手権」でも全チーム車両に採用されている。

 現在はこの技術基盤をもとに、建設機械、鉱山機械、電動フェリー、洋上船舶、航空宇宙、グリーン水素モビリティ、防衛など、より過酷な条件が求められる幅広い分野へ展開。小型・高耐久の電力変換装置を提供しており、特に限られた空間・重量制限が厳しいオフハイウェイ車両や船舶に最適という。

 ABBトラクション事業部プレジデントのエドガー・ケラー氏は「今回の買収は、輸送業界における脱炭素化を支える我々の戦略を一段と前進させるものだ。ブライトループのソフトウェア定義型パワープラットフォームと高性能分野での知見は、よりスマートでクリーンなエネルギーへの移行を支援する鍵となる」とコメントしている。

 一方、ブライトループのフロラン・リフランCEOは「ABBの仲間に加わることを誇りに思う。今後はABBの持つグローバルな産業基盤と販売力を活かし、急拡大する市場に向けて革新的な製品を届けていく」と意欲を示した。

 買収後もブライトループのフランス国内におけるエンジニアリング・製造拠点は維持され、今後はグローバル展開を加速する方針。ABBは両社の技術的な相乗効果を通じて、インテリジェントで持続可能な電力変換ソリューションの開発を一層推進していく構えだ。

 ABBは、電動化と自動化分野のグローバルリーダーで、持続可能で資源効率の高い社会の実現を支援している。従業員数は世界で約11万人、140年以上の歴史を持ち、スイス証券取引所(ABBN)およびナスダック・ストックホルム(ABB)に上場している。

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