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住友重機械、液化水素貯蔵の損失ゼロへ 新型冷凍機で「水素社会」に貢献

 住友重機械工業は5月27日、液化水素の貯蔵における水素ガス(BOG)の放出を完全に抑制する新型極低温冷凍機を開発し、その安全性と有効性を実証したと発表した。これにより、これまで課題とされてきた水素の損失ゼロを実現し、水素社会の実現に大きく貢献するものと期待される。

■水素損失、長年の課題を解決
 液化水素は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた次世代エネルギーとして国内外で注目を集めている。しかし、その沸点はマイナス253℃と極めて低く、貯蔵中に気化して発生するBOGを大気中に放出せざるを得ず、特に100m³以下の小型容器では1日あたり液化水素全量の0.5~1%が失われるという経済的な損失が課題となっていた。

 同社の技術研究所と精密機器事業部が共同開発した今回の新型冷凍機は、このBOGを完全に回収・再凝縮することを可能にした。これにより、貯蔵時に水素を放散する必要がなくなり、水素の損失がゼロとなる。

■高い回収効率と安全性も確保
 今回の冷凍機は、同社が医療用MRI向けで世界トップシェアを誇るGM冷凍機をベースに、独自の熱交換器を介して冷熱を効率的に水素ガスに伝える仕組みを採用。マイナス253℃の極低温環境を効率良く生成し、BOGの発生を完全に抑制する。
 さらに、回収された水素の経済価値は、冷凍機の稼働に必要な電気代を十分に賄える試算も出ており(2030年の国内目標価格30円/Nm³で算出)、経済的なメリットも大きい。可燃性ガスである水素の漏出を考慮した防爆構造も新たに設計され、法令順守の安全性も確保されている。

■今後の展望
 住友重機械は今後、さらに効率性の高い冷凍機の開発を進め、BOG回収効率のさらなる向上を目指す。また、電気機器の防爆構造に関する国際規格「IEC-Ex」認証の取得も視野に入れている。同社は、世界で高いシェアを誇る極低温冷凍機の可能性を広げ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく姿勢を示している。
 
 画像は冷凍機のイメージ

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