2025年5月6日、第一工程機械網—-国際的な市場調査会社であるResearch and Markets(リサーチ・・マーケッツ社)はこのほど、「世界の小型建設機械市場予測レポート(2025-2032年)」を発表した。同レポートによると、世界の小型建設機械市場規模は2025年の395億2,000万米ドル(概算 6 兆円)、2032年には560億5,000万米ドル(概算8.兆円)に拡大し、年平均成長率(CAGR)は5.1%に達する見込みである。アジアおよび北米地域における住宅、商業、インフラ投資の活発化が、この市場成長の主要な原動力となると指摘されている。
■LFPバッテリー、電動小型建設機械の主流に
電動小型建設機械の分野では、リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーが急速に主流の選択肢となりつつある。三一SY19EミニショベルやボルボL25電動ローダーなど、具体的な製品がLFPバッテリーを採用。LFPバッテリーは、その高い電気化学的安定性、優れた耐熱性、80%~90%の放電容量、長い耐用年数、低いメンテナンスコストといった利点から、ニッケルマンガンコバルト(NMC)バッテリーに取って代わりつつあるという。
リサーチ・アンド・マーケッツ社は、中国が世界の主要なLFP電池生産拠点であり、安価な原材料と成熟したサプライチェーンが機器製造コストをさらに押し下げていると指摘。アジアメーカーによる欧米市場への輸出機械にも広く採用され、世界的な普及が進むと予測する。しかし、LFPバッテリーは低コストである一方で、NMCバッテリーよりも重量が重く、機器全体の重量増加や運用の柔軟性への影響が懸念されており、技術的な課題の克服が急務とされる。
■2~3.5Lエンジン、従来型パワー市場で最大セグメントを維持
従来のパワーセグメントでは、2~3.5Lの排気量エンジンが最大の市場規模を誇る。この排気量帯のエンジンは、低コスト、軽量、燃費の良さを兼ね備え、小型ショベル、スキッドローダー、小型クローラーローダー、ホイールローダーなどに幅広く使用されている。都市の再建や小規模な土木工事において高い人気を誇り、米国、インド、中東諸国で高い需要が見られる。アジア市場では小型掘削機が主流であるのに対し、北米ではスキッドステアローダーと小型クローラーローダーが好まれる傾向にある。
市場を牽引する要因としては、住宅部門への継続的な投資が挙げられる。2023年の米国住宅建設は前年同期比2.6%増加の見込みであり、インドの建設業界は2024年上半期に約31億米ドルの外国直接投資を受け入れている。「メイク・イン・インディア」計画や「スマートシティ」政策も、設備調達の需要を直接的に牽引している。
■アジア市場、中国とインドが成長を牽引
地域別に見ると、アジア市場が世界の小型建設機械市場の21.0%以上を占めている。中でもインドと中国が、それぞれ25.0%以上、20.0%以上のシェアでアジア市場をリードしている。
インドでは、2023年に高級住宅販売が前年比75.0%急増し、不動産部門への外国投資は31億米ドルに達した。スマートシティ計画によるインフラ投資の増加も、小型機器の需要を促進している。中国の建設業界も成長傾向を維持し、2023年には国内GDPの約6.8%を占める見込み。2024年度予算では建設業界への支出が4兆米ドルに達し、道路インフラ改良に1,730億ドルを投資する計画が立てられている。
アジアには斗山ボブキャット(韓国)、クボタ(日本)、コマツ(日本)、三一重工(中国)といった世界をリードするメーカーが拠点を構えており、政策的な優遇と現地生産の利点により、アジア企業の市場競争力は今後も強化されるとみられる。
■市場の課題と機会
リサーチ・アンド・マーケッツ社は、小型建設機械市場における推進要因(加速する都市化、人件費の上昇)、制約(国際貿易政策の不安定性)、潜在的機会(水素駆動型小型機器の技術進歩、自律型小型機器およびデジタルサービスの急速な発展)、そして主な課題(水素燃料および代替燃料のサプライチェーン問題、電気機器のバッテリー関連問題)を体系的に分析している。560億ドル規模に達する市場において、企業は戦略的かつ将来を見据えた取り組みが不可欠であり、グリーン産業とインテリジェント産業の二重の産業変革において、先行して地位を確立することが競争の主導権を握る鍵となるだろう。