2024年度における我が国経済は、緩やかな個人消費の回復やインバウンド消費の増加により、景気は緩やかな回復基調にあるが、日米金利差を背景とした円安、エネルギー価格の高騰、原材料や部品の値上げ、及び米国の関税政策の見直し等、先行きに不透明な状況を残した。このような経営環境の下、同社グループは「東京計器ビジョン2030」の実現に向け、2024年度から3年間を成長に向けた飛躍の期間として位置付けた。2024年度からの新たな中期経営計画では、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るステージへと転換していくために、利益の拡大を重視した基本方針として「収益力の向上」を最優先に掲げ、「事業領域の拡大」と「経営基盤の強化」に取り組んできた。
「事業領域の拡大」については、防衛・通信機器事業において、防衛装備庁と「MEMS-半球共振ジャイロスコープ/慣性航法技術の研究」について研究請負契約を締結し、研究開発を開始した。また、油空圧機器事業の製品である動的再構成プロセッサ(DAPDNA)を利用して、画像検査に用いるエッジAIシステムの研究開発を進めている。
「経営基盤の強化」については、全社基幹システム更新を含めたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、AIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革し、競争上の優位性の確立に取り組んでいる。また、売上高の増加に伴う人員の増強と教育の充実を図り、人的資本を強化している。
東京計器2025年3月期通期データ
■ セグメント別の業績
〔船舶港湾機器事業〕
<売上高の状況> 新造船向け機器の納入及び保守サービスが好調であったこと、為替が円安基調であったことから前期比で増収。
<営業利益の状況> 売上高の増加や円安により、前期比で大幅な増益となった。
〔油空圧機器事業〕
<営業利益の状況> 販売価格の適正化等により利益は確保したものの、売上高減少に伴い前期比で減益となった。
〔流体機器事業〕
<売上高の状況> 官需市場及び消火設備市場が堅調に推移したことから、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 官需市場の売上高の増加により、前期比で増益となった。
〔防衛・通信機器事業〕
<売上高の状況> 防衛事業において防衛予算の増加を背景に航空機用レーダー警戒装置や航空機用部品等の納入が好調に推移したことから、前期比で大幅な増収となった。
<営業利益の状況> 売上高の増加に伴い、前期比で大幅な増益となった。
〔その他の事業〕
<売上高の状況> 鉄道機器事業において主力の超音波レール探傷車の販売が増加し、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 売上高の増加に伴い、前期比で大幅な増益となった。
■今後の見通し
次期(2026年3月期)については、原油・原材料価格の高騰等に端を発した物価上昇と通商政策等の米国の政策動向による影響や、それに伴う金融資本市場の変動への懸念が残る中で、ウクライナ情勢や米中対立、中東情勢等の地政学リスクの一層の高まり等、不確実な状況が継続すると見込まれる。このような経営環境の中、次期の見通しについては、防衛・通信機器事業をはじめとして売上高の増加が見込まれるものの、人件費の増加や本社移転費用の発生が見込まれることから、全体として増収減益を予想している。
2026年3月期の連結業績予想は、売上高596億円(前期比3.4%増)、営業利益38億9,000万円(同19.9%減)、経常利益39億1,000万円(同21.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益24億6.000万円(同35.2%減)。
東京計器の2025年3月期決算短信
決算説明資料
中期経営計画業績の上方修正について