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日立建機、企業価値向上に向けた収益構造変革を引き続き推進、先崎社長が会見

 日立建機の先崎正文社長は3月10日、アナリストおよびメディア合同ミーティングを開催し、「企業価値向上に向けた収益構造変革施策」について、改めてその取り組み方を説明した。以下、冒頭の挨拶を紹介する。
 
 詳細は関連資料(PDF)参照:20250310-HCM-Meeting-J

■先崎社長の挨拶
 本日は、企業価値向上に向けてというタイトルでお話しさせていただきたいというふうに思っています。これは、現在の中期経営計画(以下、中計)、これは来年度が最終年度となりますけれども、この最終年度を迎えるにあたりまして、我々は、これまで推進してきた事業構造改革、この取り組みについて改めて整理をさせていただきたいと思っております。
 
 そして、私たちがどこに進もうとしているのかについて、資本市場の皆様、メディアの皆様にご説明、ご理解いただいた上で、ぜひご支援を賜りたいと思っているからでございます。こちらの図(関連資料)におきましては、当社の企業価値に関する各指標の推移になります。

 ROEについては、コロナ禍の影響を受けた2019年から2020年を除けば、当社がバリューチェーン事業に本格的に取り組み始めて以来、一定の市場変動の影響を受けながらも、安定的に2桁を計上しております。一方で、足元のPBRは1.0倍前後で推移し、PERも低水準であるというのが現状でございます。こうした評価というのは、私はアンバランスであるというふうに考えています。

 当社の事業戦略、成長戦略について、我々の説明が必ずしも十分ではない、あるいは皆様との対話が不足していたことに起因するのではないかというふうに考えております。この反省から、本日を起点として、皆様との対話の機会を強化し、私自身も四半期ごとの決算発表の場に出て対話することで、皆様のご意見をしっかりと経営に取り入れていきたい、こう思っている次第でございます。

 まず、このスライド(右上)におきましては、当社が進める収益構造変革の流れをまとめております。オレンジ色に、現中計で掲げている注力施策、すなわち、米州、マイニング、バリューチェーンを示しています。これらを通じて、我々は、キャッシュ創出力を強化し、そのキャッシュを注力事業へ再投資して持続的に成長していくこと、同時に株主還元の強化を図り、皆様のご期待に応えることを目指しております。

 次のスライド以降、4つの項目について説明申し上げます。すなわち、収益構造改革の現状、2つ目に、収益構造改革を支える新車、バリューチェーン両事業の事業特性、3つ目は、収益性改善を支える部品、サービス事業の成長の蓋然性、そして4つ目に、キャッシュアロケーションの考え方でございます。

 まず、こちらは2010年からの当社事業の収益実績の推移です。2020年度はコロナ禍の影響を受けましたが、注力してきたバリオチェーン事業の成長により、2021年度以降安定した利益率を維持しております。

 2024年度の油圧ショベルの世界需要は20万6,000台と、17年以来最も低いレベルになる見通しですが、このような環境下でも2桁の利益水準を確保できる計画です。新車販売の足踏みが予測される中、この3つのグラフの真ん中におきましてはマイニング、そして右側はバリューチェーン。この両事業は過去最高レベルで推移する見通しです。

 この厳しい市況の中でも稼ぐ力がついてきたというのは、ここにあるように、米州事業、またマイニング事業など注力してきた事業の成長が収益構造の改善に貢献してくれているからです。

 次は、事業別のAOIの成長率と収益率、収益性になります。米国の事業や中小型建機を中心とする新車事業が大きな売上収益を獲得しながら、バリューチェーンビジネスの中核である部品サービス事業がより高い成長率と利益率を示しています。

 米州事業やマイニング事業の強化によって、部品サービス事業の元となる稼働台数、これを拡大させ、トップラインでの成長を求めながら、同時に部品サービス事業を拡大することによってシクリカリティの低減、これを行ってきましたし、これからもそうしてまいります。

 この構造からも、収益性向上の鍵は部品サービスを軸とするバリューチェーン事業の拡大にあることが明確にお分かりいただけるのではないかと思っております。

 次に、この図(関連資料)におきましては、部品サービス事業の中心、バリューチェーン事業の対象となる稼働台数を示します。

 全世界での40万台の稼働台数を分母とする部品サービス事業の大きさはおおよそ3,000億円です。そのうち赤い部分が相対的に低い米州での規模を示しています。米州では現在およそ2万台の稼働で、約400億円の部品サービス事業の大きさですけれども2030年には稼働台数は7万台に達するみと見通しがございます。部品サービスの売上高の今後の見込みは現在精査中です。しかし、この図からも、少なくともここに大きな伸長の余地があることはご理解いただけるのではないかと思っております。

 次は、収益構造改革で確保したキャッシュをどう使ってきたかを示します。

 基本的な考え方は、しっかり財務規律を守りながら、事業の拡大のためにM&Aなどの先行投資を含む事業投資と株主還元強化をバランスよく行っていくということにあります。
 スライドの左側は、左の下におきましては全中計期間の3年間、右下は現中計の足元2年間、それぞれのキャッシュの動きです。とりわけ営業キャッシュフローの額と株主還元現預金の上限に注目していただきたいと思います。営業キャッシュフローは、前中計3年間合計のおおよそ2倍のキャッシュを現2年間で稼ぎ出しております。キャッシュ創出力がついてきたことというのがお分かりいただければ幸いです。

 株主還元も現中計2年間で前中計を上回る計画です。同時に、前中計では現預金が増加していたのに対し、足元の2年間では現預金を減少させる見込みで、キャッシュを効率的に成長投資や株主還元に振り向けているということがご理解いただけると思います。

 当社はまだまだ成長していくフェーズにあって、これからも持続的な成長に向けた投資を行いながら、安定的な株主還元を推進してまいります。安定的な配当を実現することが大前提ですが、状況によっては自社株買いを行うことも企業価値向上策として検討していく予定です。

 最後に、当社はどんな企業を目指しているかという点について説明したいと思います。当社の商品としてのメインの機械は、この絵のオレンジ色にあるように、油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダーの3種類です。しかし、この3種は現場の建設機械のおよそ6割をカバーする大きさを持っています。

 一方で、我々は強豪のようにフルラインを目指しているわけではございません。我々の戦い方はオープンであり、デジタルです。実際の現場では、様々なメーカーの機械が動いています。機械の特性や使い勝手からも、1社で全てを賄えること、これは必ずしも求められておりません。お客様のニーズは、複数のメーカーの機械を一括でマネージメントしたいということにあります。我々はそのニーズにオープンにパートナーと組み、デジタル技術を最大限に活用してお答えしたいと考えています。

 当社はこれからも世界トップクラスの信頼性を誇るコア製品を提供する建設機械メーカーであり続けるとともに、デジタル技術を最大限に活用し、オープンに様々なパートナーと連携し、ソリューションプロバイダーとしてフルラインナップのメーカーと異なるアプローチで戦ってまいります。当社はエンジンも持っておりませんし、規模に合わせたライトアセットアプローチで理想に向かってまいります。

 なお、来月4月から、現日立製作所CTOの西澤(西澤 格)氏を当社のCTOとしてお迎えすることになりました。我々は、デジタルデータをAIを含めて最大限に利活用したソリューションを提供することを通して、建設機械メーカーの中で名実ともにユニークなポジションを獲得したいと考えて、私からお願いしたものです。現在、こうしたコンセプトを基に、次期経営計画について議論を推進しております。

 20250310-HCM-Meeting-J(関連資料)

 

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