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住友商事、インドネシア ムアララボ地熱発電事業の拡張に向けた融資契約を締結

・拡張案件の総事業費約700億円、2027年に発電容量約2倍へ

 住友商事は1月14日、INPEX(東京都港区)およびインドネシアの民間発電事業デベロッパーであるPT Supreme Energy(本社:ジャカルタ、以下、SE)と共同出資するPT Supreme Energy Muara Laboh(以下、SEML)を通じて参画するインドネシア・西スマトラ州におけるムアララボ地熱発電事業に関し、2025年1月10日にSEMLが国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団と同事業の拡張案件を対象とする融資契約を締結したと発表した。

 同事業の拡張案件は、2019年12月に商業運転を開始した1号機の隣接地に2号機を増設し、発電容量を現在のおよそ2倍となる約170メガワットまで引き上げるもので、総事業費は約700億円を見込んでいる。インドネシアの国営電力会社PT PLNと2052年までの長期売電契約を締結しており、2025年3月の着工、2027年の商業運転開始を目指している。商業運転開始後は、1号機と合わせてインドネシア・スマトラ島の約90万世帯相当分の電力供給に貢献する見込み。将来的にさらに最大66メガワットを増設する再拡張も視野に入れている。

 また住友商事は、東洋エンジニアリングの子会社である同国のエンジニアリング会社・PT Inti Karya Persada TehnikおよびPT Wasa Mitra EngineeringとのコンソーシアムでEPC(注1)を担う。主要機器である蒸気タービン・発電機は富士電機製を採用する。

 融資は、JBICのほか、アジア開発銀行およびみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、百五銀行の協調融資によるプロジェクトファイナンスであり、民間金融機関の融資には日本貿易保険(NEXI)の海外事業資金貸付保険が付保される。

 この拡張案件は、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想に基づく日尼両国政府の支援を受け、推進している。

■インドネシアの地熱発電市場について
 時間帯や天候、季節の影響を受けにくい地熱発電は、1年を通して高水準の設備利用率(注2)を維持し安定的に発電できることから、ベースロード電源(注3)に位置付けられる優れた再生可能エネルギー電源といえる。

 約130の活火山を有するインドネシアは、地熱資源量(注4)が約2万8,000メガワットと推定される世界第2位の地熱大国だが、地熱発電は初期開発コストが大きいことに加え、実際に掘削した結果、十分な量の蒸気や熱水を得られないリスクがあり、開発の難易度が高いとして、同国での地熱資源利用率は約10パーセントにとどまっている。インドネシア政府は、安定的な再生可能エネルギー電源の拡大を目指し、2030年までに地熱発電容量を現在の約2,400メガワットから約5,800メガワットへ増設する方針を掲げている。

■住友商事グループのインドネシアにおける地熱発電事業の取り組み
 住友商事は、1970年代に関連設備の納入を開始して以来、これまで全世界で33件、総発電容量2,700メガワットの地熱発電設備の納入およびEPC履行の実績を有している。インドネシアにおいては、日本企業としていち早く、1995年に地熱発電への取り組みを開始し、1997年に初の地熱発電所EPC案件を受注したのを皮切りに、インドネシアの現在の地熱総発電容量の約40パーセントにあたる計12案件(総発電容量約900メガワット)に携わってきた。同事業については2011年にIPP事業者(注5)として試掘調査の段階から参画し、2019年に商業運転を開始して以降、安定稼働を通じて同国での電力事業に貢献してきた。

 住友商事は、同事業で得られた経験を生かし、今後も地熱発電事業の新規開発を進めることで、拡大するインドネシアの電力需要に応え、同国の経済発展に寄与すると共に、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーの普及に取り組んでいく。

(注1)Engineering-Procurement-Constructionの略(建設工事一括請負ビジネス)
(注2)発電設備が一定期間フル稼働した場合の発電量に対する実際の発電量の割合
(注3)季節、天候、昼夜を問わず、安定的に発電できる電源
(注4)特定地域内に理論的に存在する地熱エネルギー量 出典:エネルギー・金属鉱物資源機構
(注5)Independent Power Producerの略(独立系発電事業者)

<ムアララボ地熱発電事業>
プロジェクト名:ムアララボ(1号機)/ムアララボ(2号機)
稼働状況:稼働中/開発中
NET発電容量 :約85メガワット/約83メガワット
稼働開始時期:2019年12月/2027年(予定)
出資比率:住友商事50パーセント、INPEX 30パーセント、SE 20パーセント

 ニュースリリース

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