コマツが4月26日に発表した2024年3月期(2023年度)連結業績によると、売上高は3兆8,651億円(前期比9.1%増加)となった。建設機械・車両部門では、一般建機の需要は、中南米、欧州、アジアを中心に減少したものの、北米においては堅調に推移した。また、鉱山機械の需要は、安定的な資源価格の継続を背景に、堅調に推移した。鉱山機械を中心とした機械の高稼働による部品・サービス売上げの増加、各地域での販売価格の改善及び円安の影響などにより、売上高は前期を上回った。産業機械他部門では、自動車産業向けの大型プレス の販売増加などにより、売上高は前期を上回った。
なお、国際的な非営利団体CDPにより、「気候変動対策」及び「水セキュリティ対策」において、 本中期経営計画においてESGの経営目標として掲げているAリスト企業に認定された。また、コ ーポレートブランド強化の一環としてFIAフォーミュラ・ワン世界選手権の代表的なチームの一つで ある英国「ウィリアムズ・レーシング」との複数年スポンサー契約を締結した。
コマツは、2025年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – Together, to “The Next” for sustainable growth」において、①イノベーションによる成長の加速、②稼 ぐ力の最大化、③レジリエントな企業体質の構築を成長戦略の3本柱として掲げ、収益向上とESG課題解決の好循環による持続的成長を目指すサステナビリティ経営を引き続き重視し、需要変動に左 右されにくい事業構造の構築に向け、活動を進めている。
■部門別の概況
[建設機械・車両]
建設機械・車両部門の売上高は3兆6,152億円(前期比9.7%増加)、セグメント利益は5,740億円 (前期比29.4%増加)となった。
中期経営計画の成長戦略「イノベーションによる成長の加速」においては、鉱山向け無人ダンプ トラック運行システム(AHS)の導入を着実に進め、2024年3月末時点の総稼働台数は累計727台となった。また、建設現場向けソリューション「スマートコンストラクションR」では、ICT建機の 拡販に加え、マシンガイダンスなどのICT機能を後付けできる「Smart Construction 3D Machine Guidance」を海外市場でも拡販し、事業の拡大を図った。建設・鉱山機械のカーボンニュート ラル化については、電動化建機4機種を新たに市場導入した。また、この4機種を含む合計7 機種について、国土交通省が新設したGX建設機械認定制度の認定を取得した。 「稼ぐ力の最大化」では、コンポーネントの自社開発・生産とIoT(Komtrax)活用の強みを活かしたメンテナンス付き延長保証の拡充などにより、アフターマーケット事業を拡大した。また、砕石・鉱山などで使用される大型油圧ショベル「PC900/950」や鉱山における走路のメンテナン スに使用する大型モーターグレーダー「GD955」をモデルチェンジし、発売を開始した。 「レジリエントな企業体質の構築」では、外部環境の変化に応じて生産工場や製品供給先を柔軟 に変更するクロスソーシングの活用や、複数社から部品を調達するマルチソーシングの強化など、 外部環境の変動に強いサプライチェーンの構築に引き続き取り組んだ。
■地域別の概況
<日本> 日本では、新車需要が前期並みに推移しており、販売価格の改善などの影響もあり、売上高は前期を上回った。
<米州> 北米では、一般建機の需要は、レンタル、インフラ、エネルギー関連向けに加え、住宅建設向け も堅調に推移した。加えて、鉱山機械の需要が好調に推移したことや円安、販売価格の改善の影響もあり、売上高は前期を上回った。
中南米では、経済の先行き不透明感などにより一般建機の需要が減少したものの、鉱山機械の需 要は堅調に推移した。鉱山機械の部品・サービス売上げの増加や円安、販売価格の改善の影響もあり、売上高は前期を上回った。
<欧州・CIS> 欧州では、金利やエネルギー価格の高止まりの影響で、主要市場であるドイツと英国のほか、イタリアなどを中心に一般建機の需要が減少したものの、円安や販売価格の改善の影響により、売上高は前期並みとなった。 CISでは、ウクライナ情勢に起因したサプライチェーン及び金融・経済の制約の影響から、売上高 は前期を大幅に下回った。
<中国> 中国では、不動産市況の低迷などに起因した経済活動の停滞により、需要が低迷したことから、 売上高は前期を下回った。
<アジア・オセアニア> アジアでは、インドネシアにおける鉱山機械の需要は引き続き堅調に推移した。一方で、イ ンドネシア、タイ、ベトナムなどで公共事業の予算執行遅れや経済の先行き不透明感などにより、 一般建機の需要が減少したことから、売上高は前期を下回った。
オセアニアでは、一般建機の需要は減少したものの、鉱山機械の需要が堅調に推移したことに加 え、部品・サービス売上げが増加したこともあり、売上高は前期を上回った。
<中近東・アフリカ> 中近東では、サウジアラビアやUAEなどの産油国でのプロジェクトや、トルコの復興需要などにより、一般建機の需要が堅調に推移したことから、売上高は前期を大幅に上回った。 アフリカでは、鉱山機械及び一般建機の需要が堅調に推移したことに加え、部品・サービス売上げが増加したこともあり、売上高は前期を上回った。
[リテールファイナンス]
リテールファイナンス部門では、金利上昇や円安の影響により、売上高は1,035億円(前期比 20.9%増加)となった。セグメント利益は、前期に北米で計上した貸倒引当金の戻入益がなくなったことなどもあり、242億円(前期比11.1%減少)となった。
[産業機械他]
産業機械他部門では、自動車産業向けの鍛圧機械、板金機械、工作機械において、大型プレスの 販売増加などにより、売上高は1,956億円(前期比2.5%増加)となった。セグメント利益は、 半導体産業向けエキシマレーザー関連事業において、世界的な半導体需要の減少の影響により、メ ンテナンス売上げなどが減少したことで103億円(前期比54.5%減少)となった。
■次期の見通し
産業機械他部門では、半導体産業向けエキシマレーザー関連事業のメンテナンス売上げが回復することが見込まれることから、増収増益となる見通し。
これにより、2025年3月期の連結業績(下記)は減収減益となる見通し。
売上高3兆8,610億円(前期比0.1%減)、営業利益5,570億円(同8.3%減)、税引前当期純利益5,180億円(同10.0%減)、株主に帰属する当期純利益3470億円(同11.8%減)。
業績見通しにおける為替レートは、1米ドル=140.0円、1ユーロ=149.0円、1豪ドル=90.0 円を前提としている。
なお、コマツでは現在、北米子会社の傘下にある中南米子会社をコマツの直接の傘下に置くなどグル ープ内出資関係の見直しを検討しているが、かかる見直しを実施したとしても本件による2025 年3月期の連結業績への影響は軽微としている。