川崎重工業は4月15日、発電出力8MW級の大型ガスエンジン発電設備において、水素30%混焼フルスケール実証設備の建設工事に国内で初めて着手したと発表した。
現在、その技術と知見を活かしながら、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた水素混焼ガスエンジンの開発に取り組んでいる。水素は都市ガスや天然ガスに比べ燃焼速度が速く、燃焼温度が高い特性から、異常燃焼が生じる可能性や、燃焼室の部品が過熱することによる早期劣化が懸念されている。この課題に対し、発電出力・水素混合比率など顧客の運転環境に応じて燃焼状態を適正に制御できる独自のエンジン制御システムを構築したことに加え、燃焼室仕様の変更により、水素混焼運転時も、従来のガスエンジンと同じ発電出力の達成が可能となる。この技術は、単気筒試験機による実証運転により、水素混焼時でも安定した運用が可能であることを確認している。また、水素を体積比30%の割合で都市ガスと混焼した場合、都市ガスだけを燃焼させた場合と比べ、約420世帯分の年間排出量に相当する約1,150トンのCO₂を削減(※)する。
なお、カワサキグリーンガスエンジンの水素混焼モデルの市場投入および既設エンジンに対する水素混焼改造工事の展開は2025年を予定している。
川崎重工は、カーボンニュートラル社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素サプライチェーン(つくる・はこぶ・ためる・つかう)の技術開発を進めている。なかでも水素ガスエンジンは、日本のCO2発生量の約4割を占める発電分野における脱炭素化に貢献する「つかう」分野の重要な製品のひとつ。今後も、現在稼働中の川崎重工製ガスエンジンへの適用など、さらなる水素エネルギー利用の開発を進め、カーボンニュートラルの実現に貢献する。
※ 発電出力7,500kW、年間4,000時間運転、CO2排出係数2.29kgCO2/Nm3の場合