・2022年から手掛けるPre-FEED結果を基に検討を進め、業界の脱炭素化をさらに促進
・英国HyNet CCUSクラスターの一部として早期実現が有力視される「ペイズウッドCCS」プロジェクト向け
・独自のCO2回収技術を適用し、セメント工場排ガスから最大で年間約80万トンのCO2を回収・貯留する計画を支援
・2028年のCO2回収プラント運転開始を目指す
三菱重工業は2月6日、世界的な大手セメントメーカーであるハイデルベルク・マテリアルズUK社(Heidelberg Materials UK)から、英国フリントシャー州のペイズウッドセメント工場(Padeswood Cement Works)向けCO2回収プラントの主要装置やプラント仕様などの検討をさらに進める基本設計(FEED:Front End Engineering Design)を新たに受注したと発表した。
英国北西部にあるHyNet CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)クラスターの一部である今回のプロジェクトは、同工場のセメント製造過程で生じる排ガスから最大で年間約80万トンのCO2を回収し、リバプール沖の枯渇ガス田に貯留する計画で、2028年のCO2回収プラント運転開始を目指している。三菱重工は、エネルギー、化学、資源分野における国際的なプロフェッショナルサービス企業であるウォーリー社(Worley)と提携して今回のプロジェクトを遂行し、関西電力株式会社との共同開発による独自のCO2回収技術「Advanced KM CDR Process™」を適用したCO2回収プラントの基本設計を担う。
英国政府は2050年までのCO2排出量ネットゼロを掲げており、CO2の回収から輸送、貯留までを工業地帯ごとに一貫して実施する目的で、CCUSクラスターの構築をはじめとするインフラ整備を進めている。今回のプロジェクトでCO2を貯留するHynet CCUSクラスターは、2021年10月に当時の英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS、現 英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省:DESNZ)(注2)によって同国が進める貯留地として選定されている。また、今回のプロジェクトは、生産工程上CO2削減が困難といわれるHard-to-Abate分野であるセメント業界の脱炭素化を促進する取り組みとして具体的なCO2回収・貯留事業に選定されている。
三菱重工グループは2040年のカーボンニュートラル達成を宣言し、エネルギー需要側・供給側の脱炭素化に戦略的に取り組んでいる。このうちエネルギー供給側の脱炭素戦略である「エナジートランジション」における柱の1つが、多種多様なCO2排出源と貯留・利活用をつなげるCO2エコシステムの構築。引き続き独自のCO2回収技術を活用し、CCUS事業を強力に推進するとともに、ソリューションプロバイダーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めていく。
(注1)ペイズウッドセメント工場向けCO2回収プラントに関するPre-FEED受注について、詳しくは以下のプレスリリースを参照。
https://www.mhi.com/jp/news/22121502.html
(注2) BEISの正式名称は「Department for Business, Energy and Industrial Strategy」、DESNZの正式名称は「Department for Energy Security and Net Zero」。DESNZは、BEISの分割再編により2023年2月に創設された。
■三菱重工グループのCO2回収技術について
三菱重工グループは、1990年から関西電力株式会社と共同でCO2回収技術KM CDR Process™やAdvanced KM CDR Process™の開発に取り組んでいる。2024年2月現在、KM CDR Process™を用いたプラントを16基納入しており、さらに2基を現在建設中。またAdvanced KM CDR Process™には、これまで納入した商用のCO2回収プラント16基全てで採用されているアミン吸収液KS-1™に技術改良を加えたKS-21™が採用されている。KS-21™は、KS-1™と比べて再生効率に優れ劣化も少ないといった特長を持ち、優れた省エネルギー性能と運用コストの低減および低いアミンエミッションが確認されている。