・2024年半ばから実際の稼働負荷がかかる状態で実証試験を開始
鉱山業界では、環境意識の高まりを背景に温室効果ガスの排出を削減する取り組みのひとつとして、鉱山機械の電動化に関心が高まっている。特に、鉱山現場で稼働台数の多いダンプトラックの電動化に対する顧客からの高い要望に応えるため、日立建機は、2021年6月から重電大手ABB Ltd.(以下、ABB社)と共同でフル電動ダンプトラックの開発に着手した。そして、2023年3月1日には、ファースト・クォンタム社との間でゼロ・エミッション・パートナーシップに関する基本合意書(LOI)を締結し、同社のカンサンシ銅・金鉱山でフル電動ダンプトラックの試験機を用いて実証試験を行う予定。
日立建機では、現在のトロリー受電式リジッドダンプトラック*で実績のある技術をフル電動ダンプトラックに適用することで、開発スピードを加速してきた。これまでは、常陸那珂臨港工場で、ダンプトラックの走行をつかさどるドライブシステムに、バッテリーの充放電システムやパンタグラフなどの給電システムを段階的に組み合わせ、フル電動ダンプトラック試験機の基本動作を確認してきた。いずれのシステムも正常に作動することを確認できたことから、試験機をザンビアの鉱山現場に移し、2024年半ばから、実際の稼働負荷がかかる状態で、走る・曲がる・止まるといったダンプトラックに求められる基本性能や、バッテリー充放電サイクルなどを検証する実証試験を開始する。
ファースト・クォンタム社は現在、カンサンシ銅・金鉱山で日立建機の現在のトロリー受電式ダンプトラック41台(39台のEH3500AC-II、2台のEH3500AC-3)を運行しており、フル電動ダンプトラックに必要な多くの設備がすでに整備されている。日立建機グループは、顧客と協創しながら、トロリー受電式リジッドダンプトラックの開発の知見や豊富な納入実績の強みを生かしてフル電動ダンプトラックの開発スピードを加速し、鉱山機械からの温室効果ガス排出量の実質ゼロに貢献していく。
*車体にバッテリーを搭載しておらず、登り坂の走行時に架線から電力を取り込んでACモータを駆動する方式を採用。架線設備が無い場所や下り坂などでは、充電は行わずエンジンで発電機を回して発電した電力で走行する。