㈱タクマは9月13日、子会社の㈱日本サーモエナー(東京都港区)が、日東電工(大阪市)の協力のもと、高分子分離膜によるCO2回収設備向けに、ボイラ排ガスのCO2濃度を従来の約3倍に高めることが可能な「CO2濃縮型小型貫流ボイラ」を開発したと発表した。
■開発の背景
産業界では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの利用促進や水素社会実現に向けた技術開発が進められている。その中で、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)やCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)と呼ばれる燃焼装置の排ガスからCO2を分離・回収・貯留・利用する技術は、グリーン水素との合成で天然ガスの成分であるメタンを生成するメタネーション技術の重要な要素として注目されている。
排ガスからのCO2回収は、事業用火力発電設備などの大規模な設備を中心に化学吸収法等による開発が進められているが、各種工場で使用される小規模な民生用ボイラでは規模のメリットが得られないため、発生源となるボイラに対してCO2回収設備コストが大きくなりすぎる問題がある。
この問題の解決に向けて、日本サーモエナーボイラを長年使用している日東電工より、高分子分離膜によるCO2回収設備向けとしてボイラ排ガス中のCO2濃度を高められないかという声があり、日本サーモエナーではそのニーズに対応する「CO2濃縮型小型貫流ボイラ」の開発と技術検証を進めてきた。
■製品の開発過程
従来のガス燃料焚き小型貫流ボイラの場合、排ガス中のCO2濃度は9~10vol%程度で、CO2濃度を高めるには自己の排ガスを再循環する必要がある。排ガス再循環によるCO2濃縮技術は、発電用ボイラなど蒸気使用量が概ね一定である大規模設備で実施例があるが、各種工場等で使用される小規模な民生用ボイラは、蒸気使用設備によって必要とされる蒸気量が急激に変動することが多く、排ガスCO2濃度を高めつつ、ボイラ運転を追従(バーナ燃焼量を変化させる)することは難しい面があった。
日本サーモエナーは、このような蒸気負荷の変動に追従する排ガス再循環制御システム(特許出願中)によってこの問題を克服し、小型貫流ボイラの排ガス中CO2濃度を25~30vol%(条件によっては最大50vol%)に濃縮して排出することに成功した。同製品は2024年度内での発売開始を、その初号機については日東電工への納入を計画している。
■今後について
併せて日本サーモエナーでは、排ガス再循環運転時に必要な酸素の発生装置および回収したCO2を活用するメタネーション技術を有するパートナー企業との実証試験を現在進めている。
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