日本貨物鉄道(JR貨物)とコマツは7月12日、鉄道輸送における荷役作業の生産性と安全性の向上を目指し、共同開発契約を締結したと発表した。両社は、2023年4月にコンテナ用フォークリフトのガイダンス・セミオート機能に関する共同開発契約、2023年6月に両社の関係本部長による共同開発契約の締結式を行った。両社は今後、同機能を搭載したフォークリフトの量産開発を目指し、実用化技術の共同開発を進めていく。
■概要
近年、2024年問題をはじめとするトラックドライバー不足問題への対応や輸送段階における環境負荷の低減を主眼に、大量輸送が可能であり環境特性に優れた貨物鉄道輸送への転換(モーダルシフト)の関心が高まっている。一方で、貨物駅では労働人口の減少による熟練した荷役作業オペレーターの確保や人材育成に課題がある。
JR貨物のコンテナ荷役は、主にコンテナ用フォークリフトが用いられるが、フォークリフトオペレーターは運転操作の習熟のほか、荷役作業の段取り、荷役、およびダイヤ乱れに対応した臨機応変な運用判断が求められ、経験の浅い新人オペレーターにとっては運転操作の難易度の高さ及び視認性の問題等から、とくにコンテナに対する正対動作やフォークポケットに挿すフォーク位置の調整に苦労することがある。また、荷役作業の誤操作には、車両脱線や積載済コンテナへの接触のリスクなどもある。
これらの課題を受け、コマツではフォークリフトオペレーターの作業負荷軽減を目的とし、JR貨物のコンテナの約9割を占める12ftコンテナを扱うエンジン式フォークリフト「FH120」をベースとして、操作ガイダンス機能と操作セミオート機能の先行研究を2019年より開始した。
■操作ガイダンス機能・操作セミオート機能について
操作セミオート機能は、LiDAR※等の外界センサにより、荷役対象コンテナの位置を認識し、オペレーターがアクセル操作のみでフォークリフトを自動的に荷役対象コンテナへ正対させることができる。また独自の荷役対象認識技術によりフォーク位置を正確に自動制御する。
※LiDARは「Light Detection And Ranging」の略。レーザー光を照射して、その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術。
■今後について
先行研究において、同機能がオペレーターの作業負荷軽減に大幅な効果が期待できることが確認されたことから、今回の共同開発契約締結を通じ、今後は両社で同機能を搭載した量産車両の共同開発を進め、2024年度から全国の貨物駅へ、21台の車両導入を目指す。
JR貨物は、「JR貨物グループ長期ビジョン2030」で掲げた、4つの社会価値における、「物流生産性の向上」「安全・安心な物流サービス」を社会に提供することを目指し、コンテナ荷役の省力化、安全性向上につながる遠隔操縦フォークリフトの導入を進める。
コマツは、今後も、安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場を、顧客とともに実現していく。
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