売上高は、受注高の大幅増加や 円安効果、全社的な販売価格の適正化への継続的な取り組み等の結果、増収となつた。一 方、原材料価格の高騰、及び製品構成の変化等により原価率が上昇したことに加え、販管費も増加したことから、 営業利益、経常利益ともに減益となった。このほか、政策保有株式の縮減により株式売却益662百万円を特別利益に計上したものの、油空圧機器事業において減損損失1,115百万円を特別損失に計上したことか ら、親会社株主に帰属する当期純利益は減少した。
■経営成績の概況
同社グループは、2021年6月に開示した「東京計器ビジョン2030」を実現させるた め、中期事業計画の基本方針である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」 に取り組んできた。
■ セグメント別の業績
〔船舶港湾機器事業〕
<売上高の状況> 商船市場において、サプライチェーンの混乱による出荷遅れ、換装販売の延期等の影響を受けて売上高が減少した。一方、海外市場において、東アジアでの新造船向け機器販売や欧米でのOEM製品の販売、保守サービス が好調に推移したことに加え、為替が円安に推移したことから売上高が増加した。この結果、前期比で増収 となった。
<営業利益の状況> 材料価格の高騰の影響があったものの、売上高の増加や円安効果もあり、前期比で大幅な増益となった。
〔油空圧機器事業〕
<売上高の状況> 海外市場において、ゼロコロナ政策による中国経済の停滞とその影響を受けた韓国・台湾での需要減により販売が減少した。一方、工作機械市場において、生産性向上やカーボンニュートラルを志向した設備投資が好調に推移したことに加え、建設機械市場においても、国内の公共投資が堅調に推移したこと、及び米国向け建設機械需要増により、販売が増加した。この結果、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 販売価格の適正化による利益確保に取り組んでいるものの、原材料価格の高騰、水道光熱費の増加によるコスト増を賄えず、営業損失となった。
〔流体機器事業〕
<売上高の状況> 民需市場において大型案件の受注を獲得したものの、官需市場において前期に好調だった下水道及び農業用水向け案件が例年並みに落ち着いたことから、主力の超音波流量計の販売が減少した。一方、消火設備市場において「ガス系消火設備の容器弁点検の安全性に係る点検」に基づく部品販売及び交換工事が好調に推移した。この結果、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 製品構成の変化及び原材料価格の高騰等により原価率が上昇し、前期比で減益となった。
〔防衛・通信機器事業〕
<売上高の状況> 通信機器事業において、トンネル掘削マシン用FOGコンパスや自治体向け地震計用加速度計の販売が増加したものの、放送局向け機器の販売が大きく減少し、前期比で減収となった。一方、防衛事業において、昨年までの案件の谷間から回復に転じ、戦闘機用レーダー警戒装置等の販売が増加し、前期比で増収となった。この結果、全体としては、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 製品構成の変化による原価率の上昇、及び水道光熱費の増加等により、営業損失となった。
〔その他の事業〕
<売上高の状況> 同事業では、検査機器事業において印刷品質検査装置の販売が減少した。一方、鉄道機器事業において主力の超音波レール探傷車の販売が増加し、過去最高の売上高となった。この結果、前期比で増収となった。
<営業利益の状況> 鉄道機器事業において、超音波レール探傷車の販売の増加により過去最高の利益となったことから、前期比で 大きく増益となった。
■今後の見通し
2024年3月期(2023年度)については、エネルギー・原材料価格高騰、日米金利差を背景とした為替変動、ウクライナ情勢や米中対立等の地政学リスクの高まり、インフレと各国の金融引き締め等、不確実な状況が継続す ると見込まれる。
このような経営環境の中、次期の見通しについては、過去10年間で最高水準の受注残高や、防衛予算増加を背景として増収を見込んでいる。また、人材投資・研究開発投資を行いつつ、各事業において販売価格の適正化等に取り組むことで増益を見込んでいる。
なお、原材料価格の高騰等が業績に与える影響については、現時点で想定されるものを一定程度織り込んでいる。
2024年3月期の連結業績予想は、売上高457億円(前期比3.2%増)、営業利益13億1,200万円(同2.9%増)、経常利益16億8,700万円(同8.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8億7,300万円(同38.7%増)。