・サーキュラー・エコノミーの実現に貢献
日立建機は4月24日、超大型油圧ショベルの製品寿命*1を1.5倍にすることをめざし、耐久性を向上したブームとアームを開発したと発表した。
今回の標準適用に先がけ、2023年8月より、資源大手リオ・ティント社がオーストラリア・西オーストラリア州ピルバラ地域で操業する Brockman4鉄鉱石鉱山において、実際の稼働負荷がかかる状態で、今回開発したブーム・アームの耐久性を検証する実証試験を行う。日立建機グループは、こうした顧客との協創で得た知見や、鉱山機械の整備体制の強化、再生技術の向上により、超大型油圧ショベルの製品寿命1.5倍をめざし、サーキュラー・エコノミー*2の実現に貢献する。
多くの大手鉱山会社の顧客は、2050年までにネット・ゼロ・エミッションをめざして、段階的に脱炭素を推進する計画を立てている。超大型油圧ショベルの廃棄時に発生するCO2排出量は、1台あたり400トン*3以上のため、ネット・ゼロ・エミッションの実現に向けて、超大型油圧ショベルの長寿命化は喫緊の課題と位置付けられている。
日立建機グループでは、サーキュラー・エコノミーの実現に貢献する取り組みを強化しており、特に日本をはじめオーストラリア、アフリカなど世界各地における部品再生事業では、油圧機器やシリンダーなどの使用済み部品を再生し、再利用を積極的に推進して、新たな部品生産・利用に比べて大幅なCO2の削減を実現している。しかし、超大型油圧ショベルのブームとアームの再生は困難であり、クラック発生時に都度、補修で対応するため、CO2排出量の低減、製品の長寿命化に向けたボトルネックになっていた。今回、ブームとアームの接続部分への鋳鋼品適用範囲を拡大することにより耐久性を高め、ボトルネックを解消することができた。また、ブームはボルトで開閉可能なアクセスホール*4を設け、内部の点検を容易にすることで保守性を向上させた。溶接強度やブーム・アームの一部の厚みも強化している。なお、ブームとアームの重量は従来製品と同等にしているため、超大型油圧ショベルの作業性能は変わらない。
リオ・ティント社との協創で取り組む今回の実証試験では、日立建機が提供している鉱山現場向けのサービスソリューション「ConSite Mine(コンサイト・マイン)」の機能のひとつである「Load Index(ロード・インデックス)」を活用し、超大型油圧ショベルのブームやアームの累積負荷をモニタリングする。また、目視による日常点検に加えて、内部の損傷を検出する超音波測定を定期的に行う。
日立建機は、今後も、新車販売以外の事業である部品・サービス、レンタル、中古車、部品・車体再生などのバリューチェーン事業を拡大する。バリューチェーン事業を通じて、顧客の課題を解決すると同時に、廃棄物量と廃棄する時のCO2排出量を低減し、サーキュラー・エコノミーの実現に貢献していく。
*1: 従来の超大型油圧ショベルの耐用年数と、ブームとアームを強化した超大型油圧ショベルの耐用年数の比較。標準保証年数とは異なる。
*2サーキュラー・エコノミー:資源循環や環境保護を目的としたリユース・エコノミーにとどまらず、経済発展性も加味した社会システム像のこと。
*3: 日立建機の運転質量120tから800tクラスの超大型油圧ショベルで使われる1台当たりの鋼材平均量×鋼材1tあたりのCO2排出量1.8tで算出。
*4: 特許出願中。
画像:超大型油圧ショベルEX5600-7(バックホウ仕様)
■日立建機について
日立建機は、油圧ショベル、ホイールローダ、道路機械、鉱山機械などの開発・製造・販売・サービスの事業をグローバルで展開している建設機械メーカー。新車販売以外の事業である部品・サービス、レンタル、中古車、部品再生などの「バリューチェーン事業」の強化に注力し、デジタル技術を活用することで、顧客とのあらゆる接点において提供するソリューションを深化させている。世界に約25,000人の従業員を擁し、2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は1兆250億円、海外売上収益比率は約79%。