東レは3月17日、水素・燃料電池部材を開発・製造・販売する子会社Greenerity GmbH(本社:ドイツ連邦共和国バイエルン州アルゼナウ市、以下GNT)において、グリーン水素製造用の固体高分子(PEM)形水電解装置向けに、その中核部材である触媒付き電解質膜「Catalyst Coated Membrane(以下、CCM)※1」の増設を開始したと発表した。GNTの本社が所在するバイエルン州アルゼナウ市に新たに第3工場を確保し、生産能力として、水電解装置能力1GW(ギガワット)以上に相当する生産設備を導入する。今回の増設により、水電解装置向けCCMの生産能力は従来比3倍に拡大する。第3工場の稼働開始は2023年秋を予定しており、さらにそれ以降の増設についても検討を進めている。
また、GNT第2工場では、バスやトラックなど商用車や乗用車を含む水素燃料電池車で使用される燃料電池向けのCCMおよび膜・電極接合体「Membrane Electrode Assembly(以下、MEA)※2」を生産する設備の増設を進めていく。今回顧客への供給を開始した。フル稼働時には、第2工場の燃料電池用CCM・MEAの生産能力も燃料電池乗用車出力換算で1GW以上の規模となる。これは、燃料電池乗用車約1万台分以上に相当する。
今後も業界トップメーカーとして、拡大する市場需要に対し安定供給体制を強化していく。
カーボンニュートラルの実現に向け、太陽光や風力発電など再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して製造されるグリーン水素が注目されており、今後、飛躍的な需要拡大が見込まれている。また、水素の使用においては燃料電池の普及も確実に進んでおり、今後も大きな成長が期待されている。
GNTは、水素・燃料電池部材のトップメーカーとして、20年以上の経験と研究・技術開発力、生産力によって、グリーン水素および燃料電池のグローバルな普及・拡大に大きく貢献してきた。今回のグリーン水素製造装置向けCCMおよび燃料電池向けCCM・MEAの増設は、世界中の顧客要請に応えるもので、GNTのポジションを一層強固なものとする。
東レグループは、「水素・燃料電池部材」を次の成長を担う重要分野として位置付け、重点的に経営リソースを投入して事業拡大を推進している。GNTで展開するCCM・MEAのほか、高プロトン伝導性と低ガス透過性とを兼ね備える炭化水素系(HC)電解質膜、高圧水素タンク用の高強度炭素繊維やライナー樹脂、電極基材のカーボンペーパーおよびガス拡散層(Gas Diffusion Layer:GDL)など、水素の製造、輸送・貯蔵、利用の全ての領域で幅広く基幹素材を開発・製造している。
引き続き、東レグループが有する水素関連技術・素材の強みを生かして水素事業の積極的な拡大を図るとともに、国内外の有力パートナーとの強固な連携のもと、グローバルな水素サプライチェーン構築に取り組んでいく。
東レは、2018年に策定した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、2050年に地球規模で温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界などを目指すことを宣言し、社会全体の2050年カーボンニュートラル実現と同時に自社のカーボンニュートラル達成も目指している。今後も、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献するグリーンイノベーション事業の拡大によるGHG排出量削減と、GHGの吸収に貢献する革新技術・先端素材の開発を推進することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。
<Greenerity GmbHの概要>
会社名:Greenerity GmbH
設立: 2015年7月1日
所在地:ドイツ連邦共和国バイエルン州アルゼナウ市
資本金:86百万ユーロ
出資:東レ100%
代表者:Holger Dziallas
事業内容:水素・燃料電池用、水電解用、および水素圧縮用のCCM、MEAの開発・製造・販売
■用語説明
※1 Catalyst Coated Membrane(CCM):触媒付き電解質膜。
※2 Membrane Electrode Assembly(MEA):触媒付き電解質膜(CCM)とガス拡散層からなる膜・電極接合体。