・半導体製造装置向けなどの高級鋼需要増に対応
大同特殊鋼は3月20日、今後の需要拡大が見込まれるニッケル基合金や、クリーンステンレス等の高級鋼について更なる増産を図るため、特殊溶解設備の真空アーク再溶解炉(VAR)32基を投資額52億円で知多第2工場(愛知県知多市)に増設すると発表した。稼働開始時期は2024年度末を予定している。(用語説明は、下記参照)
ニッケル基合金やクリーンステンレス鋼などの高級鋼は、真空誘導炉で溶解した鋼塊を特殊溶解設備で再溶解し、製品内部の清浄度や均質性を高めることで、部品の強度向上や耐用時間を伸ばすことが期待できるため、航空エンジンや半導体製造装置など、さまざまな厳しい使用環境に対応できる製品。カーボンニュートラルやデジタル社会の実現に貢献する製品であり、今後ますます需要が高まることが予想される。
⼤同特殊鋼はこれまで、世界最大級の25トン真空誘導炉(VIM)※4や真空アーク再溶解炉の増設を渋川工場に行い、高級鋼の生産能力拡大を進めてきた。今回の増設にあたっては、現時点の渋川工場には真空アーク再溶解炉の増設スペースを確保できないことから、スペースを十分に確保できる知多第2工場への新設を決定した。
今回の増設で高級鋼の特殊溶解能力を拡大するだけでなく、高級鋼圧延製品の出荷工場である星崎工場(名古屋市南区)に近い工場から母材供給が可能になるため、圧延製品のリードタイム短縮も目指していく。
⼤同特殊鋼は今回の投資により、高級鋼製品の比率を高め、社会への貢献と事業の安定化に努めていく。
■用語説明
・ニッケル基合金:ニッケルを主成分とする合金で、優れた耐熱性、耐食性を有する合金。主に石油、化学、ジェットエンジンや発電用タービンなどの分野で使用される。
・クリーンステンレス:SUS316の化学成分規格内でありながら、真空誘導溶解と真空アーク再溶解を施すことで超清浄度化を実現、清浄性が求められる半導体製造装置や医療関連設備などに主に使用される。
・真空アーク再溶解炉(VAR):一次溶解(電気炉・真空誘導炉)で溶解・造塊した鋼塊を消耗電極として通電、高真空下でアーク発熱により溶融、鋼中のガス成分を低減しながら消耗電極内の介在物を浮上促進させ除去。さらに急速冷却により均質な組織を得る溶解設備。
・真空誘導炉(VIM):誘導加熱を利用した電気炉で、ニッケル基合金をはじめとする高純度金属や高級合金の溶製に用いられる溶解設備。上述の25トンは1回の溶解量を指し、設備の大きさの規模を表す。