IRENA(国際再生可能エネルギー機関)の2022年の発表では、2050年に世界のエネルギー貿易額の10%以上が水素になると予測されている。また、世界の水素ビジネス市場は200兆円以上に拡大するとの予測もあり、世界中の国々や企業がその取り組みを加速している。
荏原は、2021年8月に社長直轄の事業化プロジェクト(コーポレートプロジェクト)として、水素関連事業プロジェクトを発足した。荏原は、水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」いずれのプロセスにおいても、親和性の高い技術を多く保有している。中でも「はこぶ」においては、極低温の液体水素ポンプ技術やコンプレッサ技術を有しており、液体水素、圧縮水素、液体アンモニアなど、さまざまな輸送方式に合わせ開発を進めている。
荏原は2019年より、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、水素発電ガスタービンへの水素供給に必要となる、世界初の水素発電向け「液体水素昇圧ポンプ」を開発している。同ポンプ試作機を使用して、昨年10月にJAXA能代ロケット実験場(秋田)で液体水素による実液試験(-253℃)を実施し、大流量昇圧ポンプの設計に資する良好な試験結果を得た。
水素発電に使用される海外から海上輸送された液体水素は、国内貯蔵タンクに保有した後、タンクから払い出して水素ガスタービンに供給する際、昇圧ポンプが必要となる。
-253℃の液体水素を扱える大容量かつ発電用に高圧化したポンプは、技術的な難易度が高いため、現在は市場に存在していない。荏原が強みを持つ高圧遠心ポンプと極低温の技術をベースに、世界初の液体水素燃料供給用のポンプとして、2023年に市場投入を予定している。また、2022年の7月末にNEDOの報告会で開発進捗中間発表も行った。
同製品においては、液化水素貯蔵タンクから水素発電ガスタービンまで、極低温の次世代燃料を移送・昇圧する荏原の技術で、水素社会を繋ぐ役割を担っていくす。荏原は水素発電市場および2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速し、長期ビジョン「E-Vision2030」で掲げる持続可能な社会の実現に貢献していく。
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組むことで持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていく。