・年間80万トンのCO2回収・貯留プロジェクトで
・英国セメント業界で初の脱炭素化へ向けた取り組み、MHIENGはCO2回収プラントの基本設計を担う
・Hard-to-Abate分野へも独自のCO2回収技術を適用拡大し、世界規模でのカーボンニュートラル実現に貢献
三菱重工グループの三菱重工エンジニアリング(MHIENG、横浜市西区)は12月15日、英国の大手セメント会社であるハンソン・ユーケー社(Hanson UK)(注1)から、ウェールズ北東部フリントシャーに同社が保有するペイズウッドセメント工場(Padeswood Cement Works)向けCO2回収プラントに関する基本設計(Pre-FEED:Preliminary Front End Engineering Design)を受注したと発表した。
今回の受注は、カナダ・アルバータ州のリーハイセメント向け案件形成調査(注2)、㈱トクヤマ向けCO2回収実証試験(注2)に続く、セメント工場向けCO2回収の取り組みとなる。
このプロジェクトは、現在稼働中のペイズウッドセメント工場にCO2回収プラントを追加設置することで年間80万トンのCO2を回収し、回収したCO2をイングランド北西の枯渇ガス田へ貯留する計画。生産工程上CO2削減が困難といわれるHard-to-Abate分野であるセメント業界での脱炭素化を促進する取り組みで、英国セメント業界でのCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)導入は初となる。
MHIENGは今回、関西電力株式会社と共同開発したCO2回収技術「Advanced KM CDR Process™」を適用したCO2回収プラントの基本設計を担い、プロジェクトの実現を支援する。
英国政府は2050年までのCO2排出量ネットゼロを掲げており、CO2の回収から輸送、貯留までを工業地帯ごとに一貫して実施する目的で、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)クラスターの構築をはじめとするインフラ整備を進めている。2021年10月には、HynetとEast Coastの2つのCCUSクラスターが英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(Department for Business, Energy and Industrial Strategy:BEIS)によってTrack 1のCCUSクラスターとして選定された。今回のプロジェクトは、Hynet CCUS クラスター案件の最終候補の1つとして2022年8月に選定され、2027年のCO2回収プラント運転開始を目指している。
MHIENGは、従来の火力発電所や化学プラントに加え、バイオマス発電所、製鉄プラント、廃棄物焼却設備、ガスエンジン、船舶など、国内外のさまざまな産業分野へのCO2回収技術適用を進めている。また三菱重工グループでは、エナジートランジションの事業強化に戦略的に取り組んでおり、CO2エコシステムの構築はその中の柱の一つ。今後も、高性能なCO2回収技術のグローバル展開を通じ、脱炭素分野のリーディングカンパニーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献するとともに、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めていく。
1 ハンソン・ユーケー社は、ドイツに本社を置く世界的なセメントメジャーであるハイデルベルクマテリアル社(Heidelberg Materials AG)の英国事業会社です。
2 カナダ・アルバータ州のリーハイセメント向け案件形成調査
㈱トクヤマ向けCO2回収実証試験について、詳しくは以下プレスリリースを参照。
https://www.mhi.com/jp/news/21012102.html
https://www.mhi.com/jp/news/22032901.html
■MHIENGのCO2回収技術について
MHIENG(当時、三菱重工)は、1990年から関西電力と共同でCO2回収技術KM CDR Process™やAdvanced KM CDR Process™の開発に取り組んでおり、この分野における世界のリーディングカンパニー。2022年12月現在、KM CDR Process™を用いたプラントを14基納入しており、現在、さらに2基建設中。 Advanced KM CDR Process™には、これまで納入した商用のCO2回収プラント14基全てで採用されているアミン吸収液KS-1™に技術改良を加えたKS-21™が採用されている。KS-21™はKS-1™と比べて再生効率に優れ劣化も少ないといった特長を持ち、優れた省エネルギー性能と運用コストの低減および低いアミンエミッションが確認されている。