新ラインでは、今後需要の拡大が見込まれる、タブレット端末およびノートパソコン向けのOLEDディスプレイの生産効率を大幅に高める、第8世代のガラス基板に対応した大型メタルマスクを生産する。また、メタルマスクの主要生産拠点である三原工場(広島県)をバックアップすることで、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)への対応強化を図る。DNPは、黒崎工場のライン新設により、メタルマスク生産能力を従来の2倍以上にしていく計画。スマートフォン向けのメタルマスク生産で、世界トップシェアを持つ強みをタブレット端末やノートパソコン向けにも展開し、さらなる事業拡大を目指す。
■メタルマスク生産ライン新設の背景
OLEDディスプレイは自発光する有機分子層を電極で挟んだ構造をしており、薄型化や省電力化が可能でコントラストにも優れているため、スマートフォンでの搭載率が2025年までに50%を越えると見込まれている。さらに今後は、タブレット端末やノートパソコン等のIT製品でも、高付加価値化に向けてOLEDディスプレイの採用が加速し、IT製品向けの市場が2025年までに現状の約5倍に拡大することが予測されている。こうしたディスプレイの大型化にともない、OLEDパネルメーカー各社は、現在の第6世代サイズよりも生産効率が高い大型の第8世代のガラス基板での量産について、検討を開始している。
メタルマスクの製品市場で世界トップシェアを持つDNPは今回、他社に先駆けて第8世代基板に対応した大型メタルマスク生産ラインを黒崎工場に構築する。同工場では、生産を終了した液晶ディスプレイ用カラーフィルターの工場建屋を活用することで、投資効率の向上を図る。
■メタルマスクの概要とDNPの取り組み
メタルマスクは、光の3原色(RGB:Red・Green・Blue)のOLED発光材料を基板に付着させる際に用いる、微細な開孔が精密に配置された薄い金属製の部材。真空状態の装置内で有機材料を蒸発させ、ガラスやプラスチック等の基板上に定着させて薄膜を形成する“蒸着”という工程で、RGB各色を塗り分けるためにメタルマスクが使われている。
OLEDディスプレイで鮮やかな映像を映し出すには、RGBの有機材料を精密に付着させることが重要であり、その生産工程の中でも特にマスクを使った蒸着プロセスは高度な技術・ノウハウを要するため、メタルマスクにも高い寸法精度が求められる。
DNPは、独自のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を活かし、2001年にメタルマスクの開発を開始し、現在はスマートフォン向けを中心に、世界トップシェアを獲得している。また、メタルマスクに関連して、材料や製造方法、製品に関する特許やノウハウを幅広く保有しており、優れた技術開発力や、高品質・高精度な製品を安定して供給する能力などが高く評価されている。
■今後の展開
DNPは、黒崎工場に生産ラインを新設し、2024年上期に稼働させることで、OLEDパネルメーカーに対して、高品質なメタルマスクの多様な製品ラインアップを安定的に供給していく。